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突然の戦闘モード

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    きこりん

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    突然の戦闘モード 犬や猫でもたまにあるが、野生動物でも同じ行動を起こす。 べつに何かがあるわけでもないのに、あらぬ方向を凝視したり、戦闘モードになったりする。 ムーンが見ている方向には道路が横切り、その向こうは隣家の壁となっている。 道路といっても交通量はゼロに等しく、ましてや過疎地の深夜ともなれば、何か動くものがあるわけでもない。 なのにムーンは姿勢を低くして戦闘モードになった。 男は咄嗟に、玄関の壁の隠し扉を開け、超高性能ニューロン破壊光線銃を取り出して、万が一のために身構えた。 このあたりには最近、テリトリーの拡大を図る反社会勢力のアライグマが時折現れ、もともとこのあたりを根城にしているキタキツネ組と、その配下組織のエゾタヌキ会の存在を脅かしている。 それどころか、最近キタキツネ組と懇意にしている初代きこりん組にまで手を出し始めていた。 男は、ムーンの見つめる視線の先に暗視レーザーを照射し、そこにいるであろうアライグマ組のスパイの動向をうかがった。 なおも微動だにせず一点を見つめ続けるムーンの口元には、超合金バイオ牙が鈍く光り、濃硫酸の唾液が滴っていた。 ムーンは、かつての戦闘で左手の指先をすべて失い、左足もまた動かせないほどに痛めつけられていた。 そのため、反社会勢力への恨みは大きく、そのことがきっかけで、もとは対抗勢力だった初代きこりん組と手を組むこととなった。 人工芝型セーフティーエリアに戦闘モードで身構えたままのムーンは、夜間活動が続いたためか、どうやら太陽電池の充電とゼンマイの両方が切れてしまっていたらしく、翌朝の太陽の日差しを浴びるまでこのまま動かなかった。 男は、一応周囲を偵察し、何もいないことを確認してから、すべての装備を再び隠し扉の奥へとしまい、ムーンのゼンマイを巻いてから、地下の秘密基地へと消えていった。

    2020年03月12日23時08分

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