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梅つぼみ開きて香る雨上がり *つづき 佳夫は少々あっけにとられていた。こんな凛子を見るのは初めてだ。高校生のころの凛子は、おっとりした、というか、のんびりした、というか、全体にほわんとした子だった。それが今、世界に向かって乗り出そうとしている。 「君は・・、変わった・・、いや、花開いたなあ。まぶしいよ」 「まだだわ、佳夫くん。これからよ」。「今日会えてよかった。佳夫くんに触発されたもの」 「いや、ぼくこそ触発されたよ。君は昔から素敵だったけど、今はもっと素敵だよ」 *下につづく
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*つづき 「あら、うれしい」。「ねえ、佳夫くん、明日も写真撮るの?」 「ああ、梅の花が咲いてからは、ほぼ毎日撮ってる。大好きなんだ」 「あした、私も一緒に撮っていい?」 「え、君も写真をやるの?」 「ええ、他の人が少林寺拳法をやっているところを写真に撮るのが趣味なの。自分でやるのも好きだけど、技を見るのも好きなんだ。上手な人の技はとてもきれいなの。とくに投げ技。それを写真でぴしゃっと止めると、もう芸術よ」 「動態撮影をする人は、動かない花なんかに興味がないと思っていたよ」 「たしかにお花は撮ったことないんだけど、佳夫くんがこうして一生懸命になっているのには何か魅力があるんだな、と思って・・」 「へえ、驚いた。じゃあ明日いっしょに撮ろうか」。 「よかった!」 「それじゃ、何時頃がいい?」」 「何時でも。佳夫くんに合わせるわ」 「朝と夕とどっちがいい?」 「それじゃ夕方の方がいいわ。朝は遅いの、家にいると」 「そうか。じゃあ、夕4時少し前にしよう。日が傾いた頃の光がいい」 「OK。じゃああした、夕4時少し前。ここでね」 「ああ」 凛子は、たったったっ、と帰って行った。 *つづく
2020年03月13日14時07分