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山ブドウのジャムとシフォンケーキ

山ブドウのジャムとシフォンケーキ

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    きこりん

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    男は、森の奥へと入って行った。 急に山ブドウのジャムを食べたくなったのだ。 裏山の森で山ブドウが絡んでいるのはほとんどが真っすぐ伸びる唐松ばかりなので、足をかけて登るのは少し面倒だ。 男は森の中を彷徨い、手ごろなところに枝がある胡桃や線木に絡んでいる山ブドウを探し歩いた。 手が届きそうな低い所に生えた山ブドウの実は、反社会勢力のエゾシカ一家や、近年凄まじい勢いで勢力を拡大しているアライグマ組の連中が奪い取っていく。 しかし、完熟していないものは奴らでも好まないほどとても酸っぱく、高いところまで登ってまで採ろうとはせず、結局そのうち忘れてしまう。 だから、この辺の森の山ブドウは高い所にしか実がなっていない。 見つけたのは枝の茂った赤松に絡んだ山ブドウだった。 赤松の横には程よく枝を二股に伸ばした胡桃があり、それを取っ掛かりにして赤松へと登った。 体を支えるためにと持ってきた「超小型ランチャー内蔵ロープ」を木に巻きつけ、それに腕を通して使うのがやっとで、いつもよりも不安定な体制を強いられながらも4メートルほども登った。 男の目前にはパチンコ玉ほどの黒い粒がいくつもの房となってぶら下がっていた。 男は、あらかじめ用意してきた「超高性能戦闘用鎌付き山ブドウ採取専用鉤棒」で、赤松の枝に張り巡らされた山ブドウの枝を引っ掛けては手元へと手繰り寄せ、片手だけで器用に山ブドウの房を採取しては、一緒に持って上がった籠に入れていった。 そんな調子で30分ほども山ブドウを採取していると、まだまだ目の前には山ブドウの房がたくさんあるのに、籠からは零れ落ちんばかりに山ブドウが山盛りになっていた。 男は、後ろ髪を引かれる思いで森を離れ、キッチンへと向かった。 男は、採取してきた山ブドウをザザッと軽く洗い、その実を軸から外して300グラムを「地雷探知装置付き小鍋」に入れ、300グラムのグラニュー糖をまぶしてから軽く潰して1時間ほど置いた。 これはその後、くし切りにして冷凍して置いてあるレモン1/4個分を半解凍して細かく刻んでからこの「地雷探知装置付き小鍋」に入れ一緒に弱火にかけて煮詰めていく。 男はふと思いつき、この山ブドウのジャムを美味しく食べるためにとアイスクリームを作り始めた。 3っつの「特殊ヘルメット兼用ボウル」を用意し、3個分の卵白と、3個分の卵黄と、生クリーム200ccをそれぞれに入れた。 男はまず、「特殊工作員専用ハンドミキサー」で3個分の卵白にグラニュー糖10グラムを入れて硬いメレンゲを作った。 続いて、生クリームに10グラムのグラニュー糖とバニラエッセンス数滴を入れ「特殊工作員専用ハンドミキサー」の1番遅い回転でホイップクリームを作った。 ホイップクリームは手早く作るよりも、ゆっくりじっくり作る方が滑らかで上品な仕上がりになる。 最後に、3個分の卵黄にグラニュー糖60グラムを入れて手早く、マヨネーズ状になるまでしっかりと混ぜ合わせた。 次に、この3っつを混ぜ合わせるのだが、まずはホイップクリームにマヨネーズ状の卵黄を入れ、「無線探知機内臓ゴムベラ」でしっかりと合わせ、そこにメレンゲを入れて均一になるようにざっくりと合わせた。 それを「超気密防弾ジップロック」に入れて一晩冷凍しておけばアイスクリームとなる。 山ブドウを入れた「地雷探知装置付き小鍋」は既に火にかけており、キッチンは山ブドウの甘酸っぱい匂いと、森の香りで満ちていた。 男は急いでアイスクリーム作りに使った道具を洗い、キッチンペーパーで2つの「特殊ヘルメット兼用ボウル」の水気を拭き取った。 男は、2つの「特殊ヘルメット兼用ボウル」それぞれに4っつの卵を卵白と卵黄にに分け入れた。 それぞれの「特殊ヘルメット兼用ボウル」にグラニュー糖35グラムを入れ、まずは4個分の卵白をメレンゲにした。 続いて、4個分の卵黄をマヨネーズ状になるまで混ぜ、サラダオイル30ccを加えて白っぽくなるまで更に混ぜ合わせた。 そこに70グラムの薄力粉を入れて粉気が無くなるまでじっくり混ぜ合わせてから、メレンゲを半分入れてしっかり混ぜ合わせた。 全体的にクリーム状になったところに残りのメレンゲを全部入れざっくりと満遍なく混ぜ合わせ、「衛星通信傍受アンテナ兼用シフォン型」に流し入れてから、あらかじめ170℃で予熱しておいた「デジタル時限装置付きオーブン」に入れ30分焼いた。 弱火にかけた「地雷探知装置付き小鍋」の中の山ブドウのジャムはすでに佳境を迎え、種や皮を漉し取って、更に少し煮詰めてできあがる。

    2019年09月28日03時00分

    きこりん

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    男は、アイスクリームができるまでの一晩を待てなかったので、このできたての山ブドウのジャムをすぐに食べたくてプレーンのシフォンケーキを作ったのだ。 さて、できあがった山ブドウのジャムは濃厚な赤紫色で、白い皿に薄くのばさなければ黒にしか見えない。 味は、レモンを皮ごと一緒に煮詰めたので、爽やかな苦みが心地いい。 男は、この甘酸っぱさとほろ苦さに、ふと遠い過去を思い出していた。 あれは1939年、あの頃ポーランドは、ナチスドイツとソビエト連邦の2か国に分割され、消滅状態にあり、侵攻してきたドイツ軍とスロヴァキア軍から逃れるために森の奥深くに潜んだ。 やがてポーランド領土は、ナチスドイツ、スロヴァキア、ソビエト連邦、リトアニアの4か国で分割占領され、ポーランド亡命政府はパリ、次いでロンドンに拠点を移し、我々は国内外で様々な反独闘争を展開しワルシャワ蜂起を起こすも、武装蜂起をしていたために20万人もの人が死亡し、蜂起は失敗した。 我々は、ドイツ軍ですら入り込めない複雑な地形の山岳部に逃げ込み、一人でも多くの同志を救出するために奔走していた。 夏と言えど朝晩の冷え込みは厳しく、食料もほとんどないため飢えや低体温症で命が尽きてしまう者も少なくなかったし、熊や山岳オオカミの脅威もあった。 そんな中で、飢えをしのぐために口にしたのがポーランドの黒スグリだった。 1945年、ソビエト連邦の占領下に置かれたのち、ポツダム会談の決定により、ポーランド人民共和国に定められた。 男は、あのときの黒スグリでジャムを作ってみたいと考えながら、この古い記憶は誰のものなのかを思い巡らせていた。

    2019年09月28日03時01分

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