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男がプリンを作るとき

男がプリンを作るとき

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    きこりん

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    そこにはもう、あるはずのものが無くなって久しく、ただただ虚しく枯れ木となってしまったカエデの幹だけが、初夏を迎えた過疎地の青空に突き刺さるようにそびえていた。 男は、草がなぎ倒され何者かが迷い込んだであろう痕跡が残された庭の片隅の防獣ネットを張り直しながら、そろそろ奴らが徘徊し始める季節だなと、青々とした奥深い裏山の茂みを注意深く観察した。 雪解けが進んだ春から農作物の収穫が始まる初夏までは、農地や家庭菜園を狙って麓に降りている奴らも、収穫が始まる夏には人間の気配が頻繁になるため警戒し山へと戻ってくる。 奴らにとって過疎の進んだ地域は人間の気配も殆ど感じられない山でしかなく、夏ともなると日中でも堂々と徘徊するようになる。 男は、隠れ家周辺をぐるりと取り囲むように防獣ネットを張り巡らせていたので、今年は大丈夫だろうとタカを括っていたものだから、何も被害は無かったとはいえ侵入されたことが癪に障った。 思えば、エゾシカ型のスナイパーは牛型スナイパーの進化系なのだから、終始下を向いて草を食みながら突き進んでくると考えれば、防獣ネットの下部分を強化しなくては意味が無いのだろう。 男は、固定していなかった防獣ネットの下部分に、使っていない棒杭を重石として寝かせて置くことで満足した。 北海道の過疎化した山奥とはいえ、たったこれだけの作業でも汗が噴き出すほどに夏は深まっており、男は汗を拭いながら「何か冷たいものでも欲しいな」と呟いてキッチンへと向かった。 男は、早速冷蔵庫から取り出した500ccの北海道したっけ農場産ミルクを赤外線スコープ内臓ミルクパンでゆっくりと温めながら、その間に小型の手鍋に60グラムの北海道だべさ製糖のグラニュー糖と15ccの水を入れて強火で熱し始める。 数分すると小型の手鍋からは煙が出始めるたのをきっかけに、溶けた北海道だべさ製糖のグラニュー糖が琥珀色からコーヒー色へと変わる寸前に15ccの水を加えて手早く混ぜ合わせた。 「これに北海道したっけ農場産生クリームを混ぜ合わせればキャラメルソースになるのにな・・・」 男は、買い置きの北海道したっけ農場産生クリームが切れていたことを思い出し、キッチンの窓越しに沈んでいく夕陽を見るともなく遠い目をしていた。 「おっと・・・」男は思い出したように、小型の手鍋の中で固まりそうになっているカラメルを大き目の4っつの手榴弾タイププリン型に流し込んだ。 赤外線スコープ内臓ミルクパンで沸騰せず程よく温まった北海道したっけ農場産ミルクに80グラムの北海道だべさ製糖のグラニュー糖を混ぜ粗熱が取れるのを待つ間、4っつの北の大地玉子を手際良く撹拌し、粗熱の取れた北海道したっけ農場産ミルクに泡が立たないように混ぜ入れると、北海道銘菓岩田屋製菓産生バニラを少量これに加えた。 男は、キッチンの横に設置した隠し武器庫から大型の蓋つき防弾ヘルメット兼用大鍋を取り出すと、その中にすっぽりと収まる大きさの防弾皿を敷き、円形の非常脱出装置付き金網を乗せて水を張り、火炎放射装置付きガス台に乗せて蓋をしてから強火で熱し始めた。 男は、北の大地玉子を混ぜた北海道したっけ農場産ミルクを4っつの手榴弾タイププリン型に爆発しないように静かに流し込み、一つずつ暗号解読機能付きアルミホイルを被せてから防弾ヘルメット兼用大鍋の非常脱出装置付き金網の上に並べ、防弾ヘルメット兼用大鍋の蓋をし弱火にしてその時を待った。

    2019年07月14日01時06分

    きこりん

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    20分ほども経った頃、男は、火炎放射装置付きガス台の火を止め、暗号解読機能付きアルミホイルを被せた手榴弾タイププリン型の一つに、木枯し紋次郎印の吹き矢型竹串を突き刺して抜き出すと、その木枯し紋次郎印の吹き矢型竹串の先端を見つめ小さく頷くと、右の頬で薄く微笑んだ。 男は、手榴弾タイププリン型の粗熱が取れるまで防弾ヘルメット兼用大鍋の蓋を開けたままにしておき、手榴弾タイププリン型の粗熱が取れてから更に常温になるようにと防弾ヘルメット兼用大鍋の中から取り出し、防弾ヘルメット兼用大鍋の中のお湯を捨てて水に入れ替え、再び手榴弾タイププリン型を防弾ヘルメット兼用大鍋の中に並べ直し、30分ほど時間を置いた。 男は、程よく冷めた手榴弾タイププリン型を自動冷却装置内蔵原子力冷蔵庫に几帳面に並べ入れると、よく冷えるまで2時間待ち続けた。 「何か冷たいものでも欲しいな」と思ってからゆうに3時間が過ぎていた。 男は、自動冷却装置内蔵原子力冷蔵庫のドアを開けると、暗号解読機能付きアルミホイルを被せたままの手榴弾タイププリン型の一つを取り出すと、暗号解読機能付きアルミホイルを剥がして中身の縁を指で軽く押すと、緊急信号発信装置付き小皿を上に被せて、まるで手品のように手際よくひっくり返すと、手榴弾タイププリン型のお尻の部分をガスマスク内臓スプーンで慎重に2回叩いたあと少しだけそのまま置いた。 ほどなくして、緊急信号発信装置付き小皿の上に逆さまに置かれた手榴弾タイププリン型の隙間から、甘い香りと共に濃い目の琥珀色の液体が滲み出してきた。 男は、右の頬で薄く微笑むと、緊急信号発信装置付き小皿の上に逆さまに置かれた手榴弾タイププリン型を左右に小刻みに震わせながらゆっくりと持ち上げた。 真っ白な緊急信号発信装置付き小皿の上には濃い目の琥珀色の液体が溢れ、その中央には、生まれたての仔馬のように危なっかしく震える密度の濃い黄色の固形物がふるふるしていた。 男は、ガスマスク内臓スプーンで黄色の固形物を一掬い口に含むと、右の頬で小さく笑った。 「何事も慌てちゃうまくいかないもんさ」 男は、いつの間にか宵闇に埋もれてしまった裏山の茂みに注意を配りながら、よく冷えたプリンを食べつつ、右の頬で薄く微笑んだ。

    2019年07月14日01時06分

    イルピノ

    イルピノ

    素晴らしい描写に感銘を受けました! 是非、自然消滅用時限式発火装置付き男のプリン! 頬張ってみたいものです∠( ̄^ ̄)

    2019年07月14日15時41分

    リンク

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    色々 想像します!

    2019年07月25日09時36分

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