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男がイチゴジャムを作るとき

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    きこりん

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    男がイチゴジャムを作るとき 庭の遊歩道を水路にしてしまうほどの激しかった雨はいつしか降り止んでいた。 今日の天気ときたら、何事も無かったかのように雲一つなく晴れ上がり、早朝こそ涼しかったものの、昼前には夏らしい陽射しと共に気温も上がった。 男は、咄嗟に立ち上がると、小ぶりのザルを手にして庭へと出た。 庭には、丹念に育てているイチゴが、自作のプランターに植えられている。 男は、この春に、あえて継ぎ接ぎだらけで隙間の多い、細くて長目のプランターを廃材で作っていた。 このプランターは庭に杭を打ち、その上に設置することで宙吊り状態にして、スナイパーたちから守っている。 隙間の多い宙吊りのプランターは、地上を徘徊するスナイパーに狙われにくく、また、豪雨に見舞われても雨水が溜まることが無い。 更には、防虫ネットを被せてあるので「鳥型」からも防御でき、果実を採取する際にも屈まなくていい。 プランターが完成した時、男は右の頬で薄く微笑んだ。 男は、いつもスナイパーに狙われ、密かな生活を脅かされていた。 そして、このイチゴもまた、標的となっていたのだ。 男の周辺には数多くのスナイパーが存在していた。 「カラス型」「アライグマ型」「野良猫型」「エゾシカ型」「キタキツネ型」「エゾタヌキ型」などの他、夏の夜になると、ただのオブジェとなり果てた煙突の上にも「エゾフクロウ型」が目を光らせている。 ターゲットはそれぞれに違うものの、いつかそのうち、「ヒグマ型」が来ることもあるだろうと懸念していた。 というのも、昨年の初夏の日中に、既にリタイアして余生を過ごしていた元某局諜報員「K」の家の周辺を「ヒグマ型」のスナイパーがうろついていたと情報が入ったからだった。 「K」の家までは上り下りが多くあり、途中には川も流れているとはいえ、男の隠れ家からは500mも離れていない場所だった。 その後「K」は、人ごみに紛れるべく人口密集地へと逃げのびたようだが、「ヒグマ型」もまた「K」を追って行ったらしく、その姿があちこちで目撃されニュースにまでなっている。 そんなニュースを目にする度に、「なんともドジなスナイパーだな」とつぶやいて、男は右の頬で薄く笑っていた。 更に男の周辺には小型の「虫型スナイパー」が無数にいるが、これもまたそれぞれに目的が違うため、隙間なく防虫ネットで囲うだけで「虫型」からの攻撃は防ぐことができた。 とはいえ、イチゴの花が咲いている間は、受粉をさせなければならないため、「虫型」が出入りできるほどの隙間は開けておいた。 その甲斐あって今年は大粒のイチゴが鈴生りとなっていた。 男は、左手に小さめのザルを、右手にはリーサルウェポンでもある「対戦車用イチゴ採取専用ハサミ」を手にして、用心深く庭へと出ると、素早く、完熟となったイチゴの果肉だけを摘み取り、更に、この日のために6年も植え続けて来たルバーブの太めの茎を数本、初めて切り取った。 幸い、「カラス型」にも「キタキツネ型」にも見つからずにイチゴとルバーブを採取できたので、「フフッ」と、男は右の頬で薄く笑った。 男は、採取したイチゴとルバーブを持ってキッチンへと急ぐと、まずはその総重量を計量した。 ジャムを作るには、総重量の50%の砂糖を使用するため欠かせない作業の一つである。 男は、材料の計量を手早く終えると、イチゴのヘタを取り、よく水洗いしてから、キッチンペーパーで水気を取り除いた。 次いで、ルバーブもよく洗って水気を取り除いてから、イチゴと同じくらいの大きさで切り刻んだ。 男のその手際はスピーディーかつスマートであり、その身のこなしからは、未だ現役と思わせるほどの殺気すら感じられる。 男は、イチゴと刻んだルバーブを、特殊防弾加工の鍋に放り込み、その総重量の50%に該当する量の砂糖を振りかけた。

    2019年06月27日01時03分

    きこりん

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    この時の砂糖は、グラニュー糖が一般的なのだが、男は、グラニュー糖25%、上白糖25%でミックスしていた。 グラニュー糖だけだと上品ですっきりとした仕上がりになり、上白糖だけだと若干癖は出るものの味わい深くなる。 その両方の特徴を備えたジャムを目指して、男はミックスした砂糖を振りかけ、軽くかき混ぜてから、およそ2時間ほど室温で放置した。 これは「浸透圧」を利用し果肉から果汁を抽出するという、男の得意とする技の一つで、他に真空パックにして低温(60℃~80℃)にて煮る方法もある。 イチゴから果汁が出るまでの2時間ほどを、できあがったジャムをどうするかについて男は悩んでいた。 「スコーンを作ろうか?アイスクリームを作ろうか?それとも・・・」 男は、これからできるイチゴジャムを、どうやって食べようかと悩んで2時間を過ごした。 男は、程よくイチゴの果汁が浸み出し、砂糖と混ざり合った頃合いを見計らい、特殊防弾加工の鍋を強火にかけた。 男は、特殊防弾加工の鍋肌がプツプツと泡立ち始めると、手早く焦げ付かないように小型カメラ内臓ゴムべらで混ぜ始めた。 男は、特殊防弾加工の鍋全体が泡立ち始めた頃合いで、火加減を中火へと切り替え、ルバーブが小型カメラ内臓ゴムべらで潰せるようになるまで煮込み始めた。 男が、小型カメラ内臓ゴムべらでルバーブを潰せるようになるまではさほど時間を要さなかった。 男は、まるで、時限爆弾の回路を一つずつ切るかのように、慎重にイチゴの果肉を避け、ルバーブの一粒一粒だけを丹念に小型カメラ内臓ゴムべらで潰し、とろみが出始めたイチゴ果汁と混ぜ始めた。 全体にとろみがつき、水っぽさが無くなってきたので、男はジャムを小型カメラ内臓ゴムべらでまとめて鍋の隅へと寄せると、バーカウンターの奥からダークラムを取り出し、剥き出しになった特殊防弾加工の鍋肌に僅かに垂らした。 部分的に高温になった特殊防弾加工の鍋からは炎が立ち上がり、仄かなアルコールが香ばしく広がった。 男は、特殊防弾加工の鍋に残ったエキス分と、隅に寄せてあったジャムを手早く混ぜて火を止めた。 ジャム作りにはレモン果汁かクエン酸が欠かせないものだが、ルバーブを使うことで程よい酸味ととろみが付き、イチゴの赤みも損なわずにジャムができる。 出来上がったジャムを特殊通信器付きスプーンで掬い一口含んで、男は右の頬で薄く笑った。

    2019年06月27日01時04分

    きこりん

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    この時、ちょうどいいタイミングでプレーンスコーンが焼きあがった。 男は、待っている2時間を無駄にはしていなかったのだ。 男は、緊急ヘルメット型ボウルに、薄力粉200グラム、ベーキングパウダー8グラム、上白糖15グラムを手早く合わせ、50グラムのバターを加えて揉み合わせ、牛乳90ccを注ぐとさっくり混ぜて生地を作った。 男は、打ち粉をした大理石のプラスティック爆弾内臓作業台に合わせた生地を取り出し、地対空ミサイル内臓の麺棒で延ばしては折り畳みを繰り返した。 およそ2センチの厚さに地対空ミサイル内臓の麺棒で延ばした生地を、盗聴器付きスコーン型でくり抜き、180℃で予熱しておいた特殊無線機付きオーブンで20分焼きあげ、プレーンスコーンを作った。 更に男は、特殊無線機付きオーブンでプレーンスコーンを焼いている間に、緊急ヘルメット型ボウルに180ccの水と上白糖20グラムを入れ、次にドライイーストを加えて小型カメラ内臓ゴムべらで混ぜ合わせた。 そのまま数分置いてから、薄力粉50グラムと強力粉230グラムを入れて吸水させるように混ぜ合わせると、食塩を3グラム入れ、全体に水が馴染むまで緊急ヘルメット型ボウルの中でよく混ぜ生地を作った。 男は、打ち粉をした大理石のプラスティック爆弾内臓作業台に合わせた生地を取り出し、押し付けながら伸ばすように生地を捏ね、全体にまとまり出したところに20グラムのバターを乗せ、バターを押し潰しながら全体に馴染むまで生地を揉み続けた。 男は、生地全体から油気が感じられなくなるまで、生地を持ちあげて大理石のプラスティック爆弾内臓作業台に叩きつけたり、押し伸ばしたりし、生地全体がツルンとすると、緊急ヘルメット型ボウルに戻し、ラップをかけて室温で1時間ほど寝かせた。 緊急ヘルメット型ボウルの中の生地が僅かにふっくらとしてきた1時間後、男は緊急ヘルメット型ボウルをそのまま冷蔵庫へ入れ、およそ12時間の低温による1時発酵を行った。 12時間後、緊急ヘルメット型ボウルいっぱいに膨らんだ生地を室温で1時間置いてから、打ち粉をした大理石のプラスティック爆弾内臓作業台に出し、4等分にして10分ほど置いた。 男は、地対空ミサイル内臓の麺棒を取り出すと、生地を一つずつ楕円形に伸ばし、それぞれをクルクルと巻いて防弾オーブン皿に置き、乾燥しないようにラップを軽く乗せて1時間ほど休ませた。 その後、180℃に予熱した特殊無線機付きオーブンに25分入れ、イチゴジャムがよく似合うコッペパンを焼きあげた。 男は、イチゴジャムをたっぷり乗せたプレーンスコーンの証拠写真を撮り忘れたことに気付いたが、その時既に、イチゴジャムをたっぷり乗せたコッペパンを食べ始めていたので、「男は、そんな小さなことは気にしないもんさ」と、右の頬で薄く笑った。

    2019年06月27日01時05分

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