yoshi.s
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敗戦後、大陸から引き上げてきた日本人は、その数500万人とも言われる。 困難を極めた祖国への帰還の旅。 自暴自棄になった引揚者たちの傍若無人の振る舞い。 極限の状況下で人間の本質が顕われる。 あれほど整然と行動していた日本人は一体どこに行ってしまったのだろう。 しかしそんな中にも、乱暴をいさめ、互いに助け合うことを説いた日本人もいた。 妬まれるのを覚悟で自らリーダーを買って出て、途方に暮れる人々に秩序を取り戻させた。 自らも苦しい中ででも他人に手を差し伸べる人間もいたのだ。 *コメント欄につづく
漢の名は中野理男、柔術や剣術を極めた彼にとって 広大な大陸に未だ見ぬ伝説の武道家を訪ね、その奥義 を受け継ぐ事が人生の目的であった。 しかし戦に敗れ志半ばで故国へ引き揚げる船中で彼の 目に映ったのはかつて希望に燃えて満州の開拓に汗を 流していた仲間たちの自暴自棄の姿だった。 大東亜共栄圏の夢が潰え、国に裏切られたという思いの ひとびとが荒れるのも無理のない事、そうだ大人は仕方 ないが荒廃した国土を、荒廃した人心を復興させる若者を 育てることこそおのれの使命だと漢が心に誓ったのは、 対馬の島影が昇る朝日に映え輝いて見えた玄界灘 の洋上であった。 昭和二十二年十月
2017年03月31日21時37分
ninjinさん よくご存知ですねえ。 これはninjinさんとの共著としましょう。 ただし、漢(おとこ)が満州に渡ったのは伝説の武術家を求めてではなく、遠山満や石原莞爾の影響下、日本民族の捨て石たらんと志願して秘密裡に進行していた特殊工作に投入されたのです。 つまり満州建国の舞台裏で働いていたのです。 その過程で、義和団事件以降地下に潜行していた幻の武術家たちに出会うことになったのです。
2017年04月01日01時03分
勝手に続編みたいなものを書き込んだ不作法をお許しください。 遠い昔、道臣先生の伝記のようなものを読んだ記憶があります。 義和団事件が契機となって武術家が地下に潜行していたのですね。 腐敗した王朝への抵抗運動を担っていたからでしょうね。 しかし不遇をかこっていた武術家にとって日本から学びに来た 青年の存在は嬉しかったでしょう。
2017年04月01日08時42分
ninjinさん 漢は武術を学びに大陸に渡ったのではなかったのです。 早くに父が死に、少年は満鉄調査部に関係していた祖父のもとに引き取られのです。武術家であり特殊な仕事をしていた祖父の影響下、少年の運命は時代の大きなうねりの中に投げ込まれることになったのです。 なお、前記、遠山満は間違いで、正しくは頭山満です。 ちなみに漢の祖父は頭山満と同郷同年輩。親交がありました。
2017年04月04日01時34分
yoshi.s
*つづき その漢(おとこ)が帰国して、必死に働き、やがて家庭を築いた。 ある日家族を連れて動物園に遊びに行った。 漢はつくづくと述懐した。 『ラクダを見るたびに戦乱に明け暮れた蒙古での若かりし頃の自分を思う。祖国に住み、子どもと遊ぶこの幸福感。体験しない者には分からぬ喜びである。平和、そして自由。愛する者を持つ楽しみ。これこそ真の極楽である』
2017年03月31日17時12分