yoshi.s
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一隅に湯気が立っている。 さすが温泉神社、境内に温泉がある。 石造りの小さな露店風呂だ。 足湯かな、とも思ったが、さすがに神社で足湯はないだろう。 石碑に、神なんとかの湯、とある。 いろいろと考えたが、どうにも読めない。 その場はそこで引き上げたが、家に帰って写真を見ていると、どうにも気になって仕方がない。辞書やネットでも調べたが、この石碑のことまでは出て来ない。 とうとう思い切って神社に電話した。 「あのう、こんな質問で恐縮ですが・・」 電話の女性の応対は優しかった。 *下に続く
*上からの続き 「あれはですね・・、ひもろぎ、と読みます」 「ひも・・・なんですか?」 「ひもろぎです」 「ひもろぎ・・?神の下の字はどう書くのですか?」 「竹冠に、離れるという字を書きます。神の字とその字を合わせて、ひもろぎと読むのです」 「はあ・・。いったいどういう意味ですか?」 「詳しくは、ここに神職がいますので、神職に代わります」 「え、ご神職?いや、それは・・」。「恐れ多い・・」と言う前に、「ちょっとお待ち下さい・・」 いとも簡単に電話相手が代わる。 うろたえる私の向こうに神職が現れた。 「そばで聞いていました。ひもろぎ(神籬)とはですね・・」 こんどは神職が懇切に話し始まった。 「神籬(ひもろぎ)とは、神様が集まるところなのです。まあ、集まっていろいろとお話をされるのでしょうね」。「幸いにここ温泉神社には、このように温泉が湧くので、あちこちの神様にお集まり頂き、温泉に浸かって寛ぎながらお話し頂けるようにと、このような風呂を設えたのです」。「神様がお集まりになる温泉(ゆ)なので、神籬の湯、と言います」 「ああ、ほんとうに学ばせて頂きました」。私は恐縮しながらお礼を述べた。 なんて気さくな神職なのだろう。話しが少し弾んで、このご神職の姓が、さはこ(左波古)で、この神社は1000数百年前から代々この左波古家が神職を務めて来たのだそうだ。1000数百年間も! それでこの温泉神社は、もとは温泉(ゆ)の神社と言い、また、佐波古神社とも言うそうだ。 それから名前談議になって、この姓は、日本にこの神職の一族しかないのだそうだ。その意味を調べたが、未だに分からないとのこと。 土地の名前が、さはこ、だからか、それとも長い間の神職の姓が、さはこ、なので土地の名が、さはこ、となったのかは、分からない。とにかく、さはこ、の意味すら分からないのだ。 なぞが謎を呼ぶ温泉神社だ。
2021年09月16日20時23分
写楽旅人さん お早いご来訪、ありがとうございます。 温泉を引いているのではなく、境内に湧出しているのだそうです。 この湯本の町には、もともと50箇所以上の温泉が湧いていたとのこと。 湯本の名、温泉(ゆ)の神社の名に恥じませんね。
2021年09月16日20時24分
続きをお待ちしておりました ときどき読むのに苦労する字に出合いますが、あなたのようにきちんと確かめないまま忘却のかなたです 電話までされたのですね それに応えてくださったご神職も素晴らしいですが、何よりもあなたの若々しい好奇心に感動です わたしも勉強させていただきました ありがとうございます 同じ文字に出合ったとき、また読めるかどうか自信がありませんが、同じような場面になったら、ちゃんと確かめてみようと思います
2021年09月16日20時21分
続きを・・? 待っていた? うれしいなあ、はなてふさん。 まあ、気になって仕方がなかったのです。 辞書を引き、ネットで調べてもだめ。 そもそも読めないのだから、調べようにもすべて推測。 で、最後の手段。知っている人に訊く。 親切な女性、もしかしたら奥さまかもしれないが、気さくに神職に代わってくれたのです。驚きでした。上記の通り、神職と話しが弾み、姓のことまで伺いました。 楽しいひとときでした。迷ったら、やる。は、間違いではないな。
2021年09月16日20時35分
興味深く拝見させて頂いていました。 yoshi.sさまの疑問から素晴らしいお話に発展させて頂きました。 千数百年も前から各地の神様がこの神社に集まって温泉を楽しみ話し合いをされるのですね。 地元の方々はこの温泉神社のこうしたお話を知っておられるのでしょうか。
2021年09月16日21時04分
michyさん そう、神さまが集まって、ここの温泉で談議をするなんて知りませんでした。そうだったのか。 やはりわれわれは、好奇心の写友です。好奇心さえあれば、写真を撮ることが様々なことにつながって行きます。写真を撮って、考えを深める。もう、これ以上ない趣味です。 さて地元の人がこんな話しをどのぐらい知っているかは分かりませんが、少なくともネットのどこにも載っていないのだから、あまり知られていないのかもしれませんね。 ご神職は、興味を持った人間がいるなら、少しでも広めようと思っているのかもしれません。 素晴らしい宣布活動です。話し振りを伺っても、とても良いお人柄のようでした。 私も少しだけ、広めるお手伝いをしたことになるかな。
2021年09月16日21時39分
筋斗雲とお帽子のお写真から始まり 温泉の涌く神社で神様の談議が千年の 彼方から続いている岩風呂までを拝見 させて頂きまして、ありがとう ございます。 学ばせて頂き、道行きも奥深く堪能致し ました。また次回が楽しみです。
2021年09月16日21時39分
頂雅さん 初めからずうっとお付き合いを頂いたようですね。 私も、もう一歩足を踏み出すことを覚えてからは、次に何があるかと楽しみになりました。 せっかくだからその楽しみをお裾分けしようなどと考え、このような長口舌になるのです。ご容赦。
2021年09月16日21時49分
神籬(ひもろぎ)。「神様が集まる場所」。素敵なお話しですね。神社には色々とご縁がある事もありエッセイを興味深く拝見させて頂いております。 私事ですが、以前大阪へ向かうフェリーで出会い意気投合し酒を酌み交わした旅人と一緒に、近々に祐徳稲荷神社の神主様を訪ねお話しする予定があり楽しみにしています。彼は学生時代単身オーストラリアやニュージーランドで過ごし以後世界中を旅してきた60歳代。ルート66の話しで意気投合致しました。
2021年09月19日10時29分
Zacky01さん 溌剌とした精神。20代の若者のようですね。 好奇心を持ち続ければ、いつまでもそのように生きられるということの証です。 少なくなって行く同類に出会えることは喜びですね。
2021年09月19日12時22分
写楽旅人
さすが温泉神社、境内に温泉が引かれているとは...^^ 折角だから神社で温泉に入ってみたいですね。
2021年09月16日19時30分