ホーム きこりん 写真一覧 北狐と老人 1 きこりん ファン登録 ユーザートップ 写真一覧 ギャラリー お気に入り ファン ファンになっているユーザーの写真 ファンになっている ファンになってくれている 北狐と老人 1 お気に入り登録93 1932件 D E 2019年08月07日23時43分 J B
コメント2件 きこりん 野生のキタキツネ「Tsuki」の物語はまだまだ続く。 先日の午後、気温も下がってきたので夕涼みよろしく庭先のブロックに腰を降ろし、何をするでもなくぼんやりとしていると、Tsukiが私に気付かず玄関フードに入って行った。 玄関フードには、風で飛ばないようにと、外に置きっ放しにできない空のプランターなどしかなく、Tsukiの興味もすぐに失せたのか、庭へ出てきて次の行動を考えているようだった。 1、2歩あるいて道路へ出ようかとしつつ、動かず声もかけずにブロックに座っていた私の方を見るとは無しに見たあと、ようやく私の存在に気付いたようで、Tsukiは私を二度見したあと少しのけ反った。 「なぁ~んだ、いたんじゃんか」とばかりに、私を見ながら腰を降ろし僅かに毛繕いをして身嗜みを整えたあと、「ねぇねぇ、何やってるの?」とでも言いたげに、私の近くに歩み寄ってくる。 いくら懐いているとはいえ、そこは野生動物なので、接触しかねない距離は危険でもある。 私が足を踏み鳴らし、手で追い払うと、Tsukiは玄関フードの前に腰を降ろし、うつ伏せた。 Tsukiのその姿はもう、飼い犬のそれであり、まるで番犬のように玄関への通り道を塞いでいる。 それでも私が動かず黙って観察していると、ゴロゴロと寝転がったり、毛繕いをしたり、あくびをしたり、その内、体を丸めてうとうとし始めるも、「ハッ!」と我に返り態勢を変えては、また、うとうととするのだった。 およそ1時間ほど、長年連れ添った飼い犬と飼い主のように、午後の柔らかな日差しと心地よい風を受けながら、穏やかな時間を過ごしていた。 不意に、Tsukiが立ち上がると、もう既に降ろしてあった防獣ネットをくぐり抜け道路へと出て行った。 「あれ?帰るのかな?」と見ていると、私の家から少し離れた道路上に糞をして戻ってきた。 私に気を使ってくれたのかもしれないと思うと、少しおかしくなって笑った。 戻ってきたTsukiは突然、目の前に立ちはだかる防獣ネットのロープを咥えると、あっさりと噛み切って見せた。 「おいおい、何するのよ!」怒ってそばに行くと、もう一度ネットを咥え引っ張ったので、手を振り上げて威嚇すると、諦めてネットを放し、しばし見つめ合った。 Tsukiは時々、私が嫌がるであろうことをする。 それはきっと、飼い猫の悪戯と同じなのだろう。 自己顕示欲であったり、気を引きたいという思いや、僅かなストレスを発散したいのだと考えている。 Tsukiがいなくなってから、噛み切られた防獣ネットのロープを、瞬間接着剤とコーキングで補修しつなぎ直した。 翌日、朝からのんびりと西向きの庭の草むしりをしていると、Tsukiが何かを咥えて現れた。 私には気付いていないようだったので、何だろうと観察していると、息絶えたネズミだった。 「ぇ?まさかプレゼントなの?」 以前、冗談で「そのうちネズミでも持ってくるかもしれない」と言っていたのが現実となった。 Tsukiは、一度そのネズミを玄関前に置き、玄関フードの中に入ると、すぐに軍手を咥えて出て来た。 この軍手は、昨日の防獣ネットのロープ補修の時にコーキングがついてしまったもので、もう汚れてボロボロだったのだが、まだ何かに使えるかもしれないと、玄関フードの棚の上に置いていたものだった。 「おいおい、せっかくの獲物をそんなとこに置いていたら、またカラスに取られちゃうよ」 以前、少し離れたところで私の姿を見つけたTsukiが、その時咥えていた何かをその場に置き、私の方へ歩み寄ろうとして、置いた何かをカラスに奪われたことがあった。 私がネズミに近寄ろうとすると、慌てて軍手を咥えたままネズミも咥えようとするが、既に口の中は軍手で一杯になっていてうまく咥えることができず、何度も咥えなおそうと繰り返している。 その姿を見て「ネズミはプレゼントしてくれるんじゃなかったのね」と思い、ほっとした。 たぶんこれも自己顕示なのだろう。 ロープを噛み切ったのと同じく、自分の能力を自慢したいのだと考察した。 そして今朝、カーテンを開けて窓越しに外を眺めると、Tsukiが玄関前にしゃがんで、私が出てくるのを待っていた。 私は見なかったことにして放っておくと、いつのまにかいなくなっていた。 この一連の物語には写真がないので信じられないかもしれないが、笑っちゃうほど真実である。 そして、今日もまた・・・ 2019年08月07日23時49分 koichi-o キタキツネさんと出会いたい。 2019年08月09日21時42分 新規登録・ログインしてコメントを書き込む コメントを書き込む 同じタグが設定されたきこりんさんの作品 最近お気に入り登録したユーザー ♪tomo♪ ファン登録 urarin77(休憩) ファン登録 雷鳴写洛 ファン登録 aomimi ファン登録 くんちゃん ファン登録 はいふろく ファン登録 エバーグリーン ファン登録 フンメルノート ファン登録
きこりん
野生のキタキツネ「Tsuki」の物語はまだまだ続く。 先日の午後、気温も下がってきたので夕涼みよろしく庭先のブロックに腰を降ろし、何をするでもなくぼんやりとしていると、Tsukiが私に気付かず玄関フードに入って行った。 玄関フードには、風で飛ばないようにと、外に置きっ放しにできない空のプランターなどしかなく、Tsukiの興味もすぐに失せたのか、庭へ出てきて次の行動を考えているようだった。 1、2歩あるいて道路へ出ようかとしつつ、動かず声もかけずにブロックに座っていた私の方を見るとは無しに見たあと、ようやく私の存在に気付いたようで、Tsukiは私を二度見したあと少しのけ反った。 「なぁ~んだ、いたんじゃんか」とばかりに、私を見ながら腰を降ろし僅かに毛繕いをして身嗜みを整えたあと、「ねぇねぇ、何やってるの?」とでも言いたげに、私の近くに歩み寄ってくる。 いくら懐いているとはいえ、そこは野生動物なので、接触しかねない距離は危険でもある。 私が足を踏み鳴らし、手で追い払うと、Tsukiは玄関フードの前に腰を降ろし、うつ伏せた。 Tsukiのその姿はもう、飼い犬のそれであり、まるで番犬のように玄関への通り道を塞いでいる。 それでも私が動かず黙って観察していると、ゴロゴロと寝転がったり、毛繕いをしたり、あくびをしたり、その内、体を丸めてうとうとし始めるも、「ハッ!」と我に返り態勢を変えては、また、うとうととするのだった。 およそ1時間ほど、長年連れ添った飼い犬と飼い主のように、午後の柔らかな日差しと心地よい風を受けながら、穏やかな時間を過ごしていた。 不意に、Tsukiが立ち上がると、もう既に降ろしてあった防獣ネットをくぐり抜け道路へと出て行った。 「あれ?帰るのかな?」と見ていると、私の家から少し離れた道路上に糞をして戻ってきた。 私に気を使ってくれたのかもしれないと思うと、少しおかしくなって笑った。 戻ってきたTsukiは突然、目の前に立ちはだかる防獣ネットのロープを咥えると、あっさりと噛み切って見せた。 「おいおい、何するのよ!」怒ってそばに行くと、もう一度ネットを咥え引っ張ったので、手を振り上げて威嚇すると、諦めてネットを放し、しばし見つめ合った。 Tsukiは時々、私が嫌がるであろうことをする。 それはきっと、飼い猫の悪戯と同じなのだろう。 自己顕示欲であったり、気を引きたいという思いや、僅かなストレスを発散したいのだと考えている。 Tsukiがいなくなってから、噛み切られた防獣ネットのロープを、瞬間接着剤とコーキングで補修しつなぎ直した。 翌日、朝からのんびりと西向きの庭の草むしりをしていると、Tsukiが何かを咥えて現れた。 私には気付いていないようだったので、何だろうと観察していると、息絶えたネズミだった。 「ぇ?まさかプレゼントなの?」 以前、冗談で「そのうちネズミでも持ってくるかもしれない」と言っていたのが現実となった。 Tsukiは、一度そのネズミを玄関前に置き、玄関フードの中に入ると、すぐに軍手を咥えて出て来た。 この軍手は、昨日の防獣ネットのロープ補修の時にコーキングがついてしまったもので、もう汚れてボロボロだったのだが、まだ何かに使えるかもしれないと、玄関フードの棚の上に置いていたものだった。 「おいおい、せっかくの獲物をそんなとこに置いていたら、またカラスに取られちゃうよ」 以前、少し離れたところで私の姿を見つけたTsukiが、その時咥えていた何かをその場に置き、私の方へ歩み寄ろうとして、置いた何かをカラスに奪われたことがあった。 私がネズミに近寄ろうとすると、慌てて軍手を咥えたままネズミも咥えようとするが、既に口の中は軍手で一杯になっていてうまく咥えることができず、何度も咥えなおそうと繰り返している。 その姿を見て「ネズミはプレゼントしてくれるんじゃなかったのね」と思い、ほっとした。 たぶんこれも自己顕示なのだろう。 ロープを噛み切ったのと同じく、自分の能力を自慢したいのだと考察した。 そして今朝、カーテンを開けて窓越しに外を眺めると、Tsukiが玄関前にしゃがんで、私が出てくるのを待っていた。 私は見なかったことにして放っておくと、いつのまにかいなくなっていた。 この一連の物語には写真がないので信じられないかもしれないが、笑っちゃうほど真実である。 そして、今日もまた・・・
2019年08月07日23時49分