豆もち
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J
B
友人と2人で家主が仕事から返ってくるのをアパートの前で待っていた。男は買い出し袋の中からビールを取り、蓋に指をかける。心地よく響く開封音が缶ジュースとは異なることを男に認識させ、ビールを飲まない男に不安と期待を募らせたのだ。ビールを口に運ぶと同時に男の舌は幼き頃の正月を思い出した。祖父の日本酒に唇をつけただけで、これは大人の飲み物だと理解し、大人になれば自分も飲めるようになるのだと思い込んでいたのだ。目の前を主婦が通り過ぎ犬だけがこちらに目を向ける。少年が苦味を胃袋に入れると友人が笑顔で帰ってきた。