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ふる里や話しが弾む梅の里 *つづき 「久しぶりだな」。佳夫が言った。 「そうね。去年は会わなかったものね。成人式だったのに」。「佳夫くん、外国に行っているようだって、だれかが言ってた」 「うん。カンボジアに行っていたんだ。おととしの暮れから去年の春休みが終わるまで」 「カンボジア?」。「いったい何しに?」 「ボランティアだよ。ストリート・チルドレンを支援するんだ」 *下につづく
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*つづき 「ストリート・チルドレンって?」 「路上生活をしている子どもたちさ」 「なぜ路上生活をしているの?」 「カンボジアでは1970年から90年代の初めまでの20年以上もの間、内戦があったんだ。あの太平洋戦争ですらも4年間だった。20年間の戦争。おまけに戦場は自分たちの住むところ。どんなにひどい戦争だったか想像もつかない。その時に多くの親たちが死に、死ななかった子どもたちは戦災孤児となった。家も家族も失ったその子たちは、野や山や路上で生活をせざるを得なかった。ごみを漁って生きているんだ。それを、路上で生きる子、ストリート・チルドレンと言う」 「でも、その子たちはもう大人になったんでしょう?」 「ああ。その戦災孤児たちの何割かは何とか生き延びて大人になり、やがて家族を持つようになった。それが今だ」。「でも子供のころの体験によって多くの親たちは心に傷を負っている。トラウマだ。それがあるために、自分の子どもに暴力を振るったり、捨ててしまったり、中には殺してしまう親もいる」。「それで子どもたちは、家に居られなくなり、路上で暮らすようになる。つまり、ストリート・チルドレン第2世代が生まれているんだ」 「そんな・・・。政府は何もしないの?」 「内戦後の政治的状況は混沌としていて、政権が成立してからも、そこまで手が回らなかった。どこにいるのか、何人いるのかも分からないストリート・チルドレンを保護する能力は行政府にはなかった」。「現在ですらも、彼らを保護することは十分にはできていない」 それで佳夫くんはどうやってボランティアに行ったの?」 *つづく
2020年03月09日18時12分