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梅の香や季節は巡る人もまた *つづき 振り向くと、梅林の脇の小さな流れに懸かった橋の上で手を振っている女性がいた。 長い髪。薄いピンクのダウン・ベストから黒いセーターの腕が伸びている。 「凛子? 」。「おう、凛子じゃないか!」 「そうよ~、わたしよ~」 ちょっとのんびりとした口調は、相変わらずのようだ。 「そっちに行ってもい~い?」 「ああ~、いいよ~」。佳夫までものんびり口調になった。 *下につづく
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*つづき 「梅の花を撮ってるの?」。凛子は草が短く生えた土手の道を、そうっと歩いて来た。そばに来ると少しいい匂いがした。 「向こうから見たら、だれかと話しているように見えた。でも誰もいないね」。近づきながら凛子が言った。 「あ、ああ」。佳夫は少しうろたえながらスピリットの居たところを見た。しかしそこには何もなく、ただ梅の花が咲いているだけだった。佳夫はスピリットが、「悪戦苦闘しているその中で・・」と、言いかけたその先が気になった。しかしもうスピリットの姿はない。 それよりも、目の前には凛子がいる。高校時代の同級生だ。一緒に遊んだり勉強したりし合ったが、好きだと言い出せず、そのまま二人は別々の大学に行ってしまった。あれからもう3年が経つ。 *つづく
2020年03月08日21時44分