ホーム きこりん 写真一覧 記録的に異常な猛暑 きこりん ファン登録 ユーザートップ 写真一覧 ギャラリー お気に入り ファン ファンになっているユーザーの写真 ファンになっている ファンになってくれている 記録的に異常な猛暑 お気に入り登録136 3451件 D E 2019年07月30日16時59分 J B
コメント1件 きこりん 突然、身体が溶け始めた。 まるで、チョコレートやアイスクリームが溶けてしまうように、手、足、腹、尻と、いたるところ、所構わずにとろけ始めた。 記録的に異常な猛暑が続いていて、道路のアスファルトが溶けたり南極の氷が溶けたり、と言った話はニュースでも報じられてはいたが、まさか自分までが溶けるとは思わなかった。 幸いにも溶けることでどこかが痛くなるということもないし、もともと人よりは太っていて、腹についた脂肪もかなり目立っていたので、少しぐらいなら溶けてくれると有り難いと思っていた。 困ることと言ったら、今まで着ていた服やズボンが合わなくなった、ということだ。 そして、身体が溶けるに従って部屋の中が臭くなり始めた。溶け落ちた脂肪が腐っている臭いだ。恐らく、身体からもくさい臭いは出ているのだろうが、肝心の鼻が溶け落ちてしまったので、臭いの元がはっきりとしない。 自分の身体だけでも臭いを落とそうとシャワーを浴びてみるが、落ちるのは身体の肉ばかりで、しまいには骨まで出てきてしまった。 脱衣所の鏡で見ると、まるでゾンビのようになっていて、五臓六腑まで、シャワーで流してしまったらしい。 はっきり言って、身の危険を感じた。 もう自分の身体には、垢のようにこびりついた腐肉の切れっ端と、下顎の隙間からこばれ落ちそうになっている脳味噌と、眼窩から辛うじてぶら下がっている白黒した目玉ぐらいで、あとは、骨と気力だけで立っているようなものになっている。 こんな姿で外に出て行ったら、一体なんと思われるだろう。 しかし、きっと、必ず、絶対、このままいくと、目玉も脳味噌も、もしかすると骨までも溶けてしまうかもしれない。それなら、最後の見納めにと外へ出てみることにした。 静かに歩かないと、残り僅かな脳味噌がこばれ落ちてしまいそうになるが、ぶら下がったままの目玉が揺れるので目まいがしてうまく歩けない。 ようやく外に出られた。 記録的に異常な猛暑はまだ続いているようだが、骨だけになってしまったので暑さは全く感じなくなっていた。 辛うじて見える目玉を持ち上げ周囲を見渡すと、溶けた子供がアイスキャンディーを噛じりながら、犬の骨を散歩させていた。 もしかすると、溶けた原因は、暑さの精じゃないのでは、と思いあたったが、遅かった。 気が付くと、自分の脳味噌を踏んづけていた。 2019年07月30日17時05分 新規登録・ログインしてコメントを書き込む コメントを書き込む 同じタグが設定されたきこりんさんの作品 最近お気に入り登録したユーザー Daikon photo ファン登録 Chanya89 ファン登録 elkoba ファン登録 雷鳴写洛 ファン登録 しろちゃん ファン登録 ひまちゃん ファン登録 こう月 ファン登録 にしじま ファン登録
きこりん
突然、身体が溶け始めた。 まるで、チョコレートやアイスクリームが溶けてしまうように、手、足、腹、尻と、いたるところ、所構わずにとろけ始めた。 記録的に異常な猛暑が続いていて、道路のアスファルトが溶けたり南極の氷が溶けたり、と言った話はニュースでも報じられてはいたが、まさか自分までが溶けるとは思わなかった。 幸いにも溶けることでどこかが痛くなるということもないし、もともと人よりは太っていて、腹についた脂肪もかなり目立っていたので、少しぐらいなら溶けてくれると有り難いと思っていた。 困ることと言ったら、今まで着ていた服やズボンが合わなくなった、ということだ。 そして、身体が溶けるに従って部屋の中が臭くなり始めた。溶け落ちた脂肪が腐っている臭いだ。恐らく、身体からもくさい臭いは出ているのだろうが、肝心の鼻が溶け落ちてしまったので、臭いの元がはっきりとしない。 自分の身体だけでも臭いを落とそうとシャワーを浴びてみるが、落ちるのは身体の肉ばかりで、しまいには骨まで出てきてしまった。 脱衣所の鏡で見ると、まるでゾンビのようになっていて、五臓六腑まで、シャワーで流してしまったらしい。 はっきり言って、身の危険を感じた。 もう自分の身体には、垢のようにこびりついた腐肉の切れっ端と、下顎の隙間からこばれ落ちそうになっている脳味噌と、眼窩から辛うじてぶら下がっている白黒した目玉ぐらいで、あとは、骨と気力だけで立っているようなものになっている。 こんな姿で外に出て行ったら、一体なんと思われるだろう。 しかし、きっと、必ず、絶対、このままいくと、目玉も脳味噌も、もしかすると骨までも溶けてしまうかもしれない。それなら、最後の見納めにと外へ出てみることにした。 静かに歩かないと、残り僅かな脳味噌がこばれ落ちてしまいそうになるが、ぶら下がったままの目玉が揺れるので目まいがしてうまく歩けない。 ようやく外に出られた。 記録的に異常な猛暑はまだ続いているようだが、骨だけになってしまったので暑さは全く感じなくなっていた。 辛うじて見える目玉を持ち上げ周囲を見渡すと、溶けた子供がアイスキャンディーを噛じりながら、犬の骨を散歩させていた。 もしかすると、溶けた原因は、暑さの精じゃないのでは、と思いあたったが、遅かった。 気が付くと、自分の脳味噌を踏んづけていた。
2019年07月30日17時05分