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きこりん

雪原の窪地に伏せて撮影していた私に気付いたロックが「あ、居たんだ」とでも言いたげに、こちらを凝視しながら、右の耳だけは男たちの方へ向けている。メイプル・ファミリーの中でも、メイプルに次いで私にフレンドリーに接してくれていたロックだが、このような表情をするのは初めてのことだった。ロックに見つかったのをきっかけに立ちあがって雪山の方に歩み寄る。私の姿を見つけた男たちは、そそくさとトラックに乗り込み立ち去って行った。明らかに悪巧みをしていた人間の行動だと感じた。少しすると、休憩をしに来たのだろう、乗用車がトラックの居た場所に止まり、人が降りてきた。しかし、ロックは警戒する風でもなく、それまでの険しい表情を崩し始めた。野生動物は、意外なほど人間を識別することができる。それは、単に服装や色だけではなく、体型や匂い、声や仕草など、情報を細かく分析して認識していると思われる。その証として、先ほどの、青いトラックに乗った二人連れの男たち以外には、恐怖や怒り、憎しみといった表情を見せることはない。一応、ほんの一瞥はくれるものの、睨みつけるような態度は見せない。つづく

2019年03月06日00時11分

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