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かくれんぼしよう

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    きこりん

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    相変わらず連日連夜訪問しに来るキタキツネのTsuki。 写真を撮ろうと出て行くと踵を返して敷地の外に出ていく。 カメラを置きに玄関に入ろうとすると、後をついてきて足元にまとわりつきながら、私の足をするりとすり抜けて私より先に玄関に入って上り框に上がるとリビングへと通じるドアを見上げる。 「ちょっとお前さぁ、図々しくなってきたんじゃなぃ?」、そう言いながらも、悪びれない表情と行動に思わず笑ってしまった。 「そこから先に入るには、もう山にはいかない。虫下しを飲む。毎日お風呂に入る。オレの支持に従う。まだまだいっぱいあるぞ。どうだ、大変だろ?」 玄関に屈んで言い聞かせるように穏やかに話しかけると、よほど大変に思ったのか、Tsukiは小首を傾げたあとすぐに玄関から外に飛び出していった。 カメラを玄関に置きTsukiの後を追って外に出てみたが、そこにはもうTsukiの姿はなかった。 苦労の方が多い野生の暮らしではあるけれど、自由と引き換えにはできないと思って帰ったのだろう。 いつもの遊びは諦めて玄関フードの戸を開け玄関に入ろうとすると、玄関横の2mほども積もっている雪山からTsukiがひょっこりと顔を出した。 すぐにカメラを手にし写真を撮ると、Tsukiは体がすっぽりと埋まってしまう雪山の向こうの方へ消えた。 私もカメラを置いてからTsukiの後を追い雪山に飛び込んでみる。 元々が敷地内で、どこがどうなっているのかもわかっているので、深く埋まるところとそうでないところの違いを私はわかっている。 少し離れたところを飛び跳ねながらTsukiが移動していくが、雪が深すぎて着地するたびに尻尾まで雪の中に隠れてしまう。 これまでは、除雪された後の道路を追いつ追われつして遊んでいたのだが、最近2~3日はふかふかの雪原でのかくれんぼをすることが多い。 さすがに、どこまでもTsukiを追いかけると私まで埋まって遭難しそうになるので、膝以上に埋まるところまでは行かないようにしているのだが、Tsukiはどこまでもどこまでも雪の中を埋まりながら進んでいく。 「Tsuki~、そんなには行けないから戻っておいで~」 夜でもあり、周囲には早々と寝静まった高齢者の住まう民家も何件かあることから大きな声は出せないので囁くように呼び掛ける。 もともと人間の言葉など理解していないだろうし、囁くような声では聞こえもしないだろう。 仕方がないので、Tsukiが振り向いてこちらを見た瞬間を見計らって、雪原に大の字に倒れて見せた。 案の定、心配してくれたのか、雪を漕いで駆け寄ってくるTsukiの気配を感じる。 飼い犬なら抱きしめてあげたいところだが、そこは野生動物なので倒れている私に食いついてこないとも限らない。 慌てて置きあがり立ち上がると、Tsukiは驚いたように私の顔を見上げ立ち止まる。 そのまま玄関の方へと歩いていくと、Tsukiも再び私の後をついてくる。 こんなことを何度か繰り返しているうちに夜は深くなり、光害の少ない過疎地の夜空は星が溢れて今にも零れ落ちそうになっていた。 散々遊んだTsukiは、大きく開けた口から舌を出し白い息を吐いている。 「疲れたねぇ・・・楽しかった?」と、屈んで問いかけてみるが答えるはずもなく、飼い犬のように尻尾を振ることもない。 Tsukiはいつものように玄関前の雪の上に座り、話しかける私の目をしっかりと見ている。 その表情は笑っているように見えた。

    2019年02月18日15時32分

    イルピノ

    イルピノ

    Tsukiちゃん、ますます懐いてきた感じですね~。 やはり妖精の話、現実的に思えてきます(^-^)/

    2019年02月18日16時48分

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