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妄想の冬

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    きこりん

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    「どうして出てきてくれなかったの?」と文句を言いたそうな顔をし、小首をかしげてしばし立ち止まるTsuki。 2月14日の早朝というか深夜3時に、私を呼び出そうと何度も家の壁を撫でたりしていたのに、結局出て行かず眠ってしまった私を問い詰めるかのようだ。 Tsukiがたたずんでいるところは玄関を開けた正面で、右手には道路へと続く通路となり、毎日除雪して確保している。 2018年の12月には、「今シーズンの雪は少ないかもしれない」などと思っていたのに、年が明けて2019年の2月となった今では、この3年の中でも最も降雪が多く、厳しい冬となったことを思い知らされる。 「どこに住んでるの?」「食事はどうしてるの?」何を尋ねても答えてはくれないTsukiだが、どういうわけかほぼ毎日のように遊びに来てくれる。 色々と思いをめぐらせ一つの推論にたどりついた。 冬の間は雪深く訪ねて行くことのできない「月光池」のクンネチュプがTsukiを使わしているのかもしれない。 或いは、Tsuki自身がクンネチュプの化身そのものなのかもしれないと思うことだ。 愚かしく思えるかもしれないが、そういう風に考えなければ、野生のキツネであるTsukiがこれほどまでに懐いてくれる理由が見当たらないのだ。 もしそうであるのなら、夜にしか現れないのも頷ける。 さてクンネチュプとは、アイヌの伝説にも登場する月の神であり、全ての夜を司る。 そして「月光池」とは、自宅の裏山を1キロほど行った山の中にある無名の泉で、私が紹介するまで訪れる人の無かった秘境でもある。 無名なのは可哀想だと思い、昔この地区にあった地名「月光町」に由来して「月光池」と私が勝手に名付けたわけだが、今ではそれが通称となっている。 そして、この「月光」という言葉から「月光池(クンネチュプ)伝説」を、これまた勝手に作り出したわけだが、今では本当に「月光池にはクンネチュプが降臨する」と、自分が作り出した物語に自分自身がどっぷりと浸っているというわけでもある。 しかして、このクンネチュプと私は密やかな恋仲にあり、本来は動くことのできない「月光池の神」が、逢うことの叶わない雪深い冬の間はTsukiというキタキツネとなり、夜毎逢いにきてくれているのだ。 そう考えれば、普段一日に一度しか来ないTsukiが、バレンタインデーの日に限って何度も訪れたことも頷けることかもしれない。 そして、キタキツネにつけた「Tsuki」という呼び名もまた、くしくも「月光池」の月から選択したものだった。 まだまだ冬の続く北国で、人知れずこんな物語が紡がれていく。 さてTsukiはというと、少しだけ追いかけっこして遊んだことで機嫌を良くし、「月光池」の方角へと通じる雪深い裏山の奥に消えていった。

    2019年02月15日22時09分

    イルピノ

    イルピノ

    まさにクンネチュプはTukiちゃんなのかもしれないですね! 感動的な物語、とても素敵なことですねー。 この写真のお顔もキュートなTukiちゃんの表情が伺い知れます(^-^)/

    2019年02月15日22時48分

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