写真共有サイトPHOTOHITO人と写真をつなぐ場所

きこりん きこりん ファン登録

真夜中の訪問者

真夜中の訪問者

J

    B

    何気に、シリーズとなっています。 疑問などは前後の投稿から読み取っていただければ幸いです。 個別の対応は行っておりません。

    コメント6件

    きこりん

    きこりん

    この2~3日、翌朝の玄関前の足跡で来ていたのは知っていたが、どうにもタイミングが合わずに逢えなかったTsukiだった。 「Tsuki」とは、毎夜のように遊びに来るキタキツネの名前だ。 冬の夜の過疎地を、小一時間も私と追いかけっこして遊んだ後「月光池」の方角に帰っていくので、月光池からの使者だという設定にして「月=Tsuki」と名付けた。 この数日は、もう春も近いというのに細かな雪粒が降り続き、この3年の中では最も降雪量が多くなっていた。 その証として、もうおろす場所すら無くなった屋根の雪は軒天とつながり、家自体が小さな雪山となっている。 時々、「ボコボコッ、ボコボコッ」っと、Tsukiがこの雪山を登って、屋根の上で飛び跳ねて遊ぶ音が聞こえる。 しばらくすると「シャッ!」っと、屋根の勾配の高い側からTsukiが飛び降りるとき、その爪で屋根のトタンを蹴る音がする。 少し呆れながらも、嬉しい自分がいる。 ベッドから出て時計を見ると、既に深夜の3時を回っていた。 防寒着を着こみ玄関灯を点けると、外の気配が消えた。 「あれ?Tsukiじゃなかったのかな?」 玄関のドアを開けると、玄関フードの前の雪原にTsukiがちょこんと腰をおろして私を待っている。 その健気な姿に思わず笑ってしまった私の声に反応したのか、ピーンと伸ばした2本の前足をソワソワと動かしだした。 その仕草は、尻尾こそ振らないものの、飼い主に遊びをねだる犬と変わらず、私は再び笑ってしまった。 「そうか、そんなに遊びたいの?」話しかけても答えは返ってこない。 「ちょっと待って。その前に記念写真を撮ろうよ・・・」 こんな時のためにカメラ用品はすべて玄関に置いてある。 Tsukiにレンズを向けると、「また撮るのぉ?」と少し嫌がる風に立ち上がりうろうろし始めた。 仕方がない。 Tsukiの素敵なポーズよりも、共に過ごした時間を記録するだけでいい。 Tsukiがこちらに戻ってきた瞬間にシャッターを押すと、ストロボが光ってしまった。 床に就く前に、吹雪の様子をストロボ撮影し、そのままストロボを付けていてスイッチも切り忘れていた。 幸い、Tsukiも一瞬たじろいだものの、態度も視力も異常はなく、いつも通り吹雪の中を走り回っていた。 撮影した写真は見事に赤目となっており、仕方がなく処理をして黒眼にした。 そのためExifも表示されない。

    2019年02月05日18時45分

    きこりん

    きこりん

    吹雪がひどくなってきたので、少し遊んで、「はい、もうおしまい。お前も真っ白じゃん」 Tsukiにそう告げて玄関に戻ると、頭を下げてトボトボと後ろを着いてくる。 玄関に入りフードのドアを閉めると、諦めたようにトボトボと帰っていく。 「あ!お土産の軍手を渡し忘れた」思い出した時には既に、Tsukiの姿は吹雪に呑み込まれていた。 吹雪の中とはいえ、野生のキツネと走り回るとさすがに体温も上がり、家に入るとすぐに汗が噴き出した。 タオルで汗を拭い、体温が下がるまでの間リビングで一服してから、再びベッドへと潜り込む。 ほどなくして、ベッドルームの窓をノックする音が聞こえた。 屋根に積もった雪はおろす場所も無くなっていたため、屋根から飛び出して積もる「雪庇」を落としたついでに何パーセントかの雪もベッドルーム側に落としていた。 その上に更に雪が積もったものだから、雪山のてっぺんは窓の上半分のところにまで達していた。 カーテンを開けてみると、Tsukiがその雪山の上に登り、ガラス窓をノックしていたのだ。 ノックといっても、前足をガラスに立て掛けただけなので「ムンッ」という圧のかかった音だったが、Tsukiの肉球が見えた。 突然カーテンが開き、明るくなったものだからTsukiもさすがに驚き、雪山から飛び降りどこかへ行ってしまった。 「まだその辺にいるんだな・・・」と確信し、もう一度身支度して外へ出て、小声で「Tsuki~♪」と呼んでみた。 どうやら家をぐるりと回ってきたようで、雪にまみれたTsukiが、いつもとは反対側の除雪もしていない雪の中から顔を出した。 「おいで・・・お土産忘れてたね・・・取りに来たんだろ?」そう言いながら、いつもあらかじめ用意してある使い古しの軍手を手にして振って見せた。 Tsukiのいるその場所は、普段から除雪する必要がないため、屋根からおろした雪の上に雪が積もり、野生のキツネですら体が丸ごと埋まってしまうほどになっていた。 そんな場所から何とか脱出を試みるTsukiの姿は、まるでイルカが飛び跳ねているようだった。 口を開け、舌を出し、白い息を吐くTsukiの姿はもう、雪遊びを楽しむ飼い犬にしか見えない。 「今日はこれでおしまいだよ」そう言ってボロボロの軍手を渡すと、引っ手繰るように咥え、Tsukiは月光池の方角へと帰って行った。 その後ろ姿はまるで、スキップでもしているように見えた。 でもさ、頼むから、夜中の3時訪問はやめようよ・・・;;

    2019年02月05日18時46分

    misochiy

    misochiy

    Tukiと楽しそうに遊んでいる光景が羨ましいです・・・ でも夜中・・・お付き合い 大変ですね  まるで生まれたての赤ちゃんのようですね。(^▽^)/

    2019年02月05日18時56分

    イルピノ

    イルピノ

    最近Tukiちゃんの写真がアップされなかったのですっかりTukiちゃんファンになった私はとても気にっておりました。 とても元気な様子、伝わってきて安心しました(^-^)/

    2019年02月05日19時27分

    GX400sp

    GX400sp

    夜中の3時、なんですね~

    2019年02月05日23時26分

    とろっこ

    とろっこ

    素敵なお話ですね(#^.^#) 続編を楽しみにしています。 言葉が通じなくても通い合う何かがあるのでしょうね。 ところで、軍手は何の為に渡しているのですか?

    2019年02月08日12時29分

    新規登録ログインしてコメントを書き込む

    同じタグが設定されたきこりんさんの作品

    • 暦の上ではもう春なのに
    • Closed forest
    • Dusk of ...
    • 春まだ遠く
    • Dear Deer
    • 破滅のメロディー

    最近お気に入り登録したユーザー

    写真を削除しようとしています。

    本当に写真を削除しますか?

    こちらのレビューを他のユーザーに公開します。

    レビューを公開しますか?
    講評の公開設定については必ずこちらをお読みください。

    コメントを削除しようとしています。

    選択したコメントを削除しますか?

    エラーが発生しました

    エラー内容

    PAGE TOP