古次郎
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この時期になると八重桜がこの丘に咲き乱れる。そして、散る定めと言うがごとき、この丘一面に桜の絨毯を敷き詰めた様にその憂愁の美を飾る。以前、ここに宅地開発の手が入る事になったが、近くの住人の訴えで残される事になった。その丘を一組の老夫婦が今日もまた、訪れていた。やがて二人にも散る時が来るだろうが、それを悟ってか、老夫婦はゆっくりと先を見つめ歩んでいた。