古次郎
ファン登録
J
B
それは夏、栃木に撮影に出かけた帰りだった。辺りはすっかり日が暮れて夏だというのに肌寒く感じるぐらいだった。機材を積んで車のエンジンを掛けようしたが、どうもバッテリーが上がってしまったようだった。仕方なく山道を歩いて下りはじめて数キロ、途中近道を選んで脇道へと入ったが、辺りは木々が鬱蒼と生い茂り月明かりも無く、唯一明りと言えば撮影時に使っている小さな懐中電灯だけだった。いくら男でも暗い夜道は不気味なものだ。それと少し気になったのが獣の臭いだろうか嫌な臭いがしている事が気になっていた。
辺りが白々してきたころ鳥の声で目が覚めた。気がつくとぼろぼろの廃寺に裸になり藁を布団代わりに寝ている自分がいてその時にはじめて狸に化かされた事を知ったと言う「証城寺」のお話でした。 今日は仕事も無く暇です。写真でも撮りに行くか迷っているが欲しいカメラも有るし、もっと働かないと安泰な老後は無い。若い頃は楽しい老後を疑いもしなかったが、それは無惨と崩れてしまい、正しく「証城寺」のお話のような結果となってしまった。こんなはずではなかったが・・・・
2015年10月20日15時49分
古次郎
その時、遠くに明りが見えてきた。こんな山奥に薄紫をした明りが見えるなんて可笑しいと思ったが、その明りの方に向かって行く事にした。だんだん明りが近くなるにつれて女性の笑い声とともに太鼓や三味線の音が聞こえ、和服姿の女性が輪になり踊っていた。私が中を覗いていると一人の奇麗な女性が手招きで中に招いてくれた。酒と料理をごちそうになり気持ちよくなりそこでそのまま寝込んでしまったようだった。
2015年10月20日10時30分