古次郎 ファン登録
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好きな版画家は?と言われたら川上澄生、若しくは棟方志功と答えるだろう。何故かと言うと知っているものが二人しかいないからだ。あるとき駅を降り改札を出ようとすると駅前の古美術やの親爺に声をかけられた。「これから棟方志功の直筆の絵を売りに来る人がいるで良かったら立ち会わないか?』との事だった。なんで私にそのような事を言うのかと思ったが半信半疑で立ち会ってみた。版画では観た事があったが、況しては直筆なんてそんなものを拝めるはずも無く、言われる通り客を待つ事にした。
結局その女性、私が店主に告げた事からかは判らないが、矢場に帰り支度をして帰って行った。後で他の書画やから銀座の画廊がこの女性と思われる人物に引っ掛かったと聞かされたが、テレビも捨てたものでは無いとその時は失笑してしまった。人間欲に駆られると普段冷静な人でも騙される。くわばらくわばら。
2015年10月20日17時27分
古次郎
少しすると中年の女性が訪れ安物のファイルケースからペラペラの紙に描かれた絵を見せた。私は思わず店主に「止めておいた方が良いよ」と告げた。「青森でおじいさんが親しくしていた」との触れ込みだったが、丁度、その前日、NHKの番組で棟方志功をやっていて彼の版画の制作する映像も流されていた。版木に頬をつけ、まるで狂乱しているかの様に彫る姿から、その薄い紙に描く事などあり得ないことだと感じた。
2015年10月19日09時37分