ぜんぜん
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すっかり日が落ちると、また峠に雪がふりだした。 あかりのない夜道を、馬の感覚を頼りにすすむ。 雪の白さで、通る場所はみえるのだ。 できることなら、さけたい仕事だが、 あすまでに運ばなければいけない荷物がある。 鈴のねを鳴らしながら、慎重に、けものみちをすすむ。 ときおり、海からの風にのって、冷気が襲ってくる。 それでも、このぶんなら、明け方には静狩まではたどりつけるだろう。 峠を下りはじめた安堵から、睡魔がおそってくるころ、 東の空が明るくなってきた。 いつのまにか雪はやんでいた。