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ninjinさん 原稿用紙1枚に収まる見事な掌編小説。 切れのある短文。 全体を俯瞰する見事な書き出しの1行。 父との関係を説明する3行。 書斎のカメラから父の人柄が描写され、 あれほど反発していたのに、書棚の本で父と自分がよく似ていたことを発見する。・・これが核。 そして主題のカメラ/写真に戻って全体が見事に締め括られる。 O.ヘンリーを思わせる最後の2行に万感の思い。 ・・出来ごとこそ違え、私も思い当たるこうした想いを鮮明に描き出しています。 涙が出そうです。
2017年03月12日15時31分
ninjin
父に写真の趣味があることは知らなかった。 父の生き様に反発して家を飛び出したのが三十年前。 以来父子の交流は途絶えた。 危篤を知らせる母からの電報さえも破り捨てた私だった。 いま母の死に際して両親の遺品を整理していたとき 父の書斎で思いがけずみつけたのがこのカメラだ。 型はおそろしく古いが手入れの行き届いた美しい 輝きを放っている。 几帳面だった父の顔を思い浮かべた。 父の愛した書物と共に並べてあげようと思い、書棚を 開けて驚いた。 私の書棚に並んでいる蔵書と同じ作家達の名がならんで いるではないか。思わず苦笑いが浮かぶ。 横手から叔父が、父の自慢の花の写真を見ないかと声を かけてくれた。 はいと応えて手を伸ばしかけたが・・・やめた。 これ以上自分と似ている父を見つけたら・・・哀しくなる。
2014年05月26日14時52分