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Pink

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    コメント欄に「Pink」という大昔に書いた文章を載せます。以前に作成していたホームページやSNS等に載せていたものですが、この写真にぴったりな気がします。

    コメント12件

    starferry

    starferry

    「Pink」 6年ほど前の今頃は、花屋に勤めていた。 毎日エプロンをつけて店先に立っていた。 ある日、小学校一年生ぐらいの女の子がひとりで花を買いに来た。 淡いベージュのセーターにピンクのチェックのスカート。 肩の辺りで切り揃えた髪が、動く度に揺れて愛らしい。 フラワーキーパーの前に立ち止まり、真剣な面持ちで花を選んでいる。 母の日でもないし、クリスマスでもないし、何のプレゼントかなぁと思って、しばらく様子を見ていた。 あっちを見たりこっちを見たり、あまりにも一生懸命でなかなか決まらない様子だったので、 「誰かにプレゼントするの?お誕生日?」と声をかけてみた。 少女は首を横に振る。「お母さんにあげる」と言う。 「お母さんお花が好きなん?」と聞くと、今度は首を縦に振る。 こんなおっさんが相手したら緊張して言葉にならないかなと思って、 ニコニコ笑顔をがんばってみた。 しかし、少女の口から思いがけない言葉を聞いて、胸がつまった。 「パパが死んじゃったの。ママ元気ないの。だからお花あげるの。」 そんな言葉を口にしながら、一生懸命お花を選んでいる。 泣きたい気持ちで爆発しそうになった。「そっかぁ。。。お母さんきっと喜ぶねぇ。」 笑顔を頑張れなくなってきた。 それから色々話を聞いてみると、つい最近お父さんが亡くなったこと、お母さんが時々泣いてるのを見かけること、おばあちゃんに、お母さんがどうしたら元気になるか聞いたら、お花がいいよって教えてもらったことがわかった。 レジの後ろへ駆け込んで、しゃがみこんで急いで涙を拭いて、パンッパンッと頬っぺたを叩いて気合いを入れなおした。 「どれにしよっか?お母さん何が好きかなぁ?」 「これがいい。」指の先にはチューリップ。鮮やかな明るいオレンジ色。 「うん、チューリップかわいいね。じゃあ、リボンつけるからちょっと待ってて。」 女の子は大人しくじっと見ている。 「お母さん早く元気になるといいね。」 「うん。」 出来上がった花束を大事そうに抱えて、ニッコリ笑ってくれた。 「ありがとう」 「気をつけてね。バイバイ」と言って手を振った。 元気よく手を振りかえしてくれると思ったら、ぺこりとおじぎをした。小さな女の子が頭を下げる姿を見て、限界に来た。どしゃぶりの雨のように涙が溢れて止まらなくなった。 もっと他に言ってあげられることはなかったか、してあげられることはなかったか。 そんな時に限って何にも出てこない。 急に思い立って、駆けていく少女を追いかけた。「ちょっと待って!」 振り返ってきょとんとしている。 「ちょっとだけ待ってて。」 店に入ってきたばかりの小さな小さなチューリップの鉢植えを急いでラッピングして、 メッセージカードに「はやくげんきになりますように」とひらがなで書いた。 その時初めて名前を聞いた。「みかより」と書き添えた。 「これもいっしょにプレゼントしてあげてな。 これは親指姫っていう名前のチューリップやねん。かわいいでしょ?」 「うん。ありがとう。」もう一度、さっきより、もっといい顔をしてくれた。 「バイバイ。ありがとうね。」 「バイバーイ。」 花よりも何よりも、輝くように明るい笑顔だった。 後日、お母さんと、おばあちゃんと、みかちゃんが店にやってきた。 わざわざお礼を言いに来てくださったのだ。 ピンクのチューリップで花束を注文してくださった。 「この子はピンクが好きなんです。私がオレンジ色が好きなものですから、こないだはオレンジを選んでくれたみたいで。」 みかちゃんはただニコニコしている。 花束を本当に嬉しそうに抱えながら、お母さんとおばあちゃんを交互に見上げる。 「よかったね」おばあちゃんが頭をなぜる。お母さんは優しい顔で見ている。 「うん!」 お母さんはきっと元気になられたことだろう。 小さな小さなみかちゃんの笑顔は、今も明るく輝いていることだろう。

    2024年01月18日23時52分

    run_photo

    run_photo

    こんばんは。 熱いものがこみあげてきました。 自分が同じ立場だったらどんな言葉、どんな行動をしてあげられたかを考えると 大したことはできなかったかもしれないです。気持ちは痛いほどわかるのに、 何もしてあげられない自分が歯がゆいという感覚はものすごくわかります。 歳を重ね、経験が豊富になるほど純粋さを失い、頭で考えることが先行してしまうから かもしれません。 でも、starferryさんの咄嗟の行動に感動しました。 長い人生、悲しいことはいくつも経験するけれど、一人でも多く笑顔にしてあげたい という気持ち、その純粋な気持ちと行動に心を打たれました。 サービスという言葉を使うと薄っぺらく聞こえてしまいますが、 お花屋さんとしての「感動を与えるサービス」「真のサービス」とは このことを言うのだと感じました。 また、花が素晴らしい力を持っていることを実感しました。 動かず何も語らない花は、その容姿だけで、人を癒し、笑顔にする不思議な生命力を感じます。 私には、この写真のチューリップの背景が笑顔に見えてきました。 明るく輝くたくさんの笑顔に見えてきました。 私は写真を撮るとき、その写真にはストーリーがあり、撮る側が考えるストーリー、 見る側が考えるストーリー。それに違いがあっても構わない。 それが写真。 素晴らしい人生の一コマと優しい光の写真をありがとうございました。

    2024年01月19日19時42分

    starferry

    starferry

    run_photoさん、こんばんは。 文章も読んでいただき、丁寧なコメントをありがとうございます。嬉しいです。元々私は子供の頃から文章を書くことが好きで、以前は文章メインのホームページなどを作成しておりました。 写真を始めてからは、説明や文章をつけなければいけないなら写真として成り立っていないのかもしれないと、言葉は最低限にしておこうと考えました。最初はタイトルも説明が過ぎるのはよくないなと英語にしてみたりと色々試行錯誤していたのですが、変に頑なになるのは成長しないなと考えを改めるようになりました。 花屋にいた頃もそれ以前も今も、花は大好きです。人の気持ちを和らげたり癒やしたり、太古の昔の墓跡から花の化石などが見つかっていることからも、大昔から変わらず人の気持ちに寄り添ってくれる存在だったのだろうと思います。 花の勉強をしていた頃に読んだ本の中に、花はそれ自体が美しいもので、アレンジを加える際にも花自体の美しさを最大限に活かし引き出すようにと、センスだとかテクニック以前に花をしっかり見ることの大切さが説かれていたのを覚えています。それは写真にも通じることかもしれません。 誰もが心の中にそれぞれのストーリーを持っていますよね。私も自分の中から生まれる物語、あるいは光や花や星のようなものを伝えることが出来たらいいなと思っています。starferryという名前も星を運ぶ船になりたいという想いを込めて使うようになりました。 まだまだ写真については勉強しなくてはいけないことだらけですが、少しづつ少しづつ、楽しみながら続けていきたいと思います。 話が飛びますが写真のコンテストというものに初めて応募してみたのですが、幸運にも佳作をいただくことができました。現在発売中のデジタルカメラマガジン2月号に小さ~く載っています。 枚方パークで撮影したカラフルな玉ボケをバックにした花の影絵の写真です。権利関係でややこしくなるとご迷惑をおかけするかもしれないのでPHOTOHITOからは削除しています。写真で何か賞をもらえるなんて嬉し過ぎて思わず雑誌を買いに走って家族にも見せました(^_^;) いつも見て頂けて本当に嬉しいです。ありがとうございますね。 今後とも、どうぞよろしくお願いします。

    2024年01月20日22時41分

    run_photo

    run_photo

    こんばんは。 私は理系なので文章は今一つですが、このように交流できることは楽しいことです。 写真コンテスト、佳作、おめでとうございます! 本サイトのセレクトなど、選ばれると励みになりますね。 カメラ雑誌はほとんど買わないのですが、久しぶりに2月号は買ってみます!

    2024年01月20日23時32分

    run_photo

    run_photo

    こんばんは。 デジタルカメラマガジン2月号買いました! 「花の影絵」拝見させていただきました。 以前このサイトでも拝見しましたが、改めて見てみると入選でもおかしくない 作品ですね。 講評にも書かれているようにタイトルも秀逸です。 おめでとうございます。

    2024年01月22日19時38分

    starferry

    starferry

    >run_photoさん こんばんは。わぁ、早速お買い上げありがとうございます! 著名なフォトグラファーの方に講評いただいた上に、カメラや写真の大先輩のrun_photoさんに そんな風におっしゃっていただけると、光栄過ぎて何ともかんとも(^_^;) たまには何か賞などいただくと、一層頑張っていこうという気持ちになりますね。 本当にどうもありがとうございます。

    2024年01月22日20時32分

    konabe6303

    konabe6303

    こんにちは。 ピンクのチューリップは小さなみかちゃんが好きな色の花だったのですね。 小さなみかちゃんにとってもパパが亡くなったのは大きな悲しみだったのでしょうが 大好きなママが悲しむ姿に一番その小さな心を痛めていたのでしょう。 小さな女の子の優しさにstarferryさんの臨機応変な優しさあふれる対応が素晴らしくて文字がにじんで見えました。

    2024年01月23日16時56分

    野良なお

    野良なお

    小説を読んでいるようでおっさんの私の目も少し潤んでしまいました。 女の子の優しさに何かしてあげたいと思う気持ちよく分かります。 良いプレゼントされましたね。

    2024年01月23日19時14分

    starferry

    starferry

    >konabe6303さん、こんばんは。 長い文章も読んでいただき、ありがとうございます。 幼いながらに、お母さんの気持ちを少しでも元気づけようと一生懸命考えたんでしょうね。 自分の好きな色よりお母さんの好きな色を選ぶところが、本当に優しい子に育ててらっしゃるんだなぁとじーんとしました。 コメントいただけてうれしいです。ありがとうございますね。

    2024年01月23日23時31分

    starferry

    starferry

    >野良なおさん、こんばんは。 読んでいただきありがとうございます。私も自分で書いたものながら、あらためて読むと涙が浮かびます。当時よりずっと、おっさん化が進んで、余計涙もろくなってきました。 何をして差し上げられる訳ではないですが、みかちゃんもお母さんもおばあさんも、ちょっとでも気持ちが明るくなったらいいなと思って、特に深く考えず行動した気がします。 コメントありがとうございますね。うれしいです。

    2024年01月23日23時37分

    khwf

    khwf

    実物にはかなわないけれど、写真もまた何かを語れるかもしれない・・

    2024年01月28日13時02分

    starferry

    starferry

    khwfさん、こんばんは。 そういう写真を撮れるようになりたいものですね。

    2024年01月29日23時31分

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