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ほうき草は顔を赤らめて少々怒っているように見えます。 「マリーさん、あんたそんな美しい姿でどうして俺のすぐそばで咲くんだい?」「おれだって一生懸命に赤くなっているのに、道ゆく人は誰も俺のことなんか見やしない」「みんなあんたばっかり見て、きれいねえ、などといって通りすぎるじゃないか」 「あら、コキアさん、あなただってきれいよ」「その色。いまみんなが忘れかけている情熱の色よ。秋はあなたの季節よ」 「ん?そ、そうかあ・・」 *下につづく
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*つづき 「そうよ。それにあなたは役にも立つ。だから人はあなたのことを、ほうき草、なんて呼ぶのよ」 「それは、おれを馬鹿にした名前じゃないか」 「そうじゃないわ。あなたは人の役に立つのよ」「誰であっても、生まれてきて誰かの役に立つということほど素敵なことはないわ」 「そ、そうかあ」「マリーさん、あんた嬉しいこと言ってくれるじゃないか」 「悪いところだけを見れば、誰にだっていやなところがあるわ」「私なんか、枯れたらただのゴミ。邪魔になるだけよ」「だからその代わりに、いまを精一杯きれいに咲こうと思っているの。みんなに喜んでもらえるようにね」 「いや、マリーさん、あんたはきれいなだけで生まれてきた価値がある。道ゆく人はみんなあんたを見て喜んで行くもの。ほんとはおれも、きれいなあんたが隣りに居るだけでうれしいんだ」 「うれしいわ、コキアさん」「これからもここで仲良く暮らしましょう。秋がゆくまでね」 「そうだな。おれもヤキモチなんぞ焼いて悪かったな。ここで仲良くやって行こう。せっかくの秋だものな」 マリーゴールドとほうき草は、ますます秋の色に染まり、少しだけ寄り添ったように見えました。 おしまい
2023年10月20日00時04分