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*つづき 海辺のレストランに予約を入れた。窓際の席もリクエストした。 ぼくはレンタカーを借りて、ライラの部屋の下に停めた。一階の玄関で彼女の部屋の呼び鈴を押すと、インターフォンから「窓を開けるわ」と答えが返って来た。外に出て3階の彼女の部屋を見上げると、窓が開いてライラが顔を出した。 ぼくに手を振りながら「いま降りていくわ」と言って窓を閉じた。 *下につづく
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*つづき 彼女はすぐに玄関から出て来た。ウェーブつばのクリーム色の帽子の下に彼女の笑顔があった。白いジョーゼットのブラウスにピンクのスカーフを首に巻いている。いつものジーンズとは打って変わってフリルの白いスカートを穿いている。 ぼくが目を丸くしていると、ライラは言った。「さあ王子さま、どこに連れていってくれるの?」 「姫君、どうぞ馬車にお乗りください」と、ぼくは答える。 車の中は楽しかったが、何を話したのかはよく憶えていない。それまで二人だけになったことはほとんどなかったのだ。 レストランに着いたとき、ちょうど夕陽が水平線のすぐ上に掛かって空が赤く染まり始めていた。 ドアマンは、若いぼくたちに対しても丁重に迎えてくれた。 予約したとおり、海辺の窓際の席に案内された。すでに夕日の色がテーブルの白いクロスをほんのりと染めていた。真ん中に置かれた二輪のバラの花瓶がそのテーブルに長い影を描いていた。窓の海に目をやると、朱に染まった海面が波の動きに応じてキラキラと輝いていた。 *つづく
2021年05月18日22時27分