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「セセリくーん。君は秘密のことを知っていたのかい?」 「ああ。ぼくはこんな騒ぎになる前から菊芋さんにはお世話になっている。だから菊芋さんの悩みも知っていたよ」「風さんが菊芋さんのために一計を案じたんだ」 「嘘の噂を流したって怒ってる虫もいるが、どう思う」 「うん。嘘がいいこととは思わない」「でも、困っている菊芋さんを助けようとしたことはいいことだ」 「嘘には良い嘘と悪い嘘がある。噓も方便と言うよね。英語にも Black lie と White lieと言う言葉がある。洋の東西を問わずだ」*下に続く
いよいよジワリと核心に迫ってきましたね。 身近にいる花、蝶、虫たちがこんなに素敵なストーリーを展開していたなんて、、、、 これから写真を撮るときには心の中で話しかけてみようっと。
2018年09月21日21時42分
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*つづき 「今回のことは悪気のある嘘じゃない。困っている誰かを救うために流した噂。そして結果的にはみんなが喜んでいる良い嘘だ」「反感を受けることがあるかも知れないことを承知の上でこの噂を流した風さんを、ぼくは尊敬するよ」 ふだんは寡黙なセセリの演説に、周りのみんなが驚いた。 セセリはさらに続けた。 「誰かに恨まれるから言わない、何にもしない、とみんなが思ってしまえば、結局なんにも起こらない。それに場合によってはだれか力の強い奴の言いなりになってしまう」「本当に良いことだと信じれば、勇気を出して言い、実行するべきだ」「たとえそれが嘘の噂だとしても、みんなのためになるなら良いことだ、それは結果で分かる。今回のことは、結局虫も菊芋さんも喜んでいるじゃないか」 と、ここまで言って、セセリははたと気づいた。 「そうか。分かった!」 「このこと自体が秘密だったのかもしれない」「風さんの言った秘密とは、なにか宝物のように思っていたが、ぼくたちの心の中にあるご都合主義、自分のことしか考えないエゴイズムを掘り起こさせることだったんじゃないだろうか」「今まで、ぼく自身もそうだったもの」 「とすれば、これは嘘の噂なんかじゃない。この出来ごとによって、虫や花たちの世界がお互いにいたわり合い、助け合うようなものになったとしたら、この噂は本物の秘密、それこそ秘密の宝物なのかも知れない」 周りの菊芋も、蝶や虫たちも、みんなこの小さなセセリの演説に聴き入ってしまい、声を失った。 しばらくして、どこからともなく拍手が起こり、やがて大きな喝采となって野に広がった。 風は相変わらず、微笑みながらその野原をわたっていた。 *つづく
2018年09月21日15時00分