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そこそこの秋風

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    きこりん

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    そこそこの秋風 曇天ながらも、そこそこの秋風がそよぐ。 僅かに湿度を感じるものの、穏やかな空気を感じ いつになく体調もいいと思えたので、カメラを抱えて小一時間ほどのお散歩に挑んでみた。 時折差し込む陽射しは未だに熱があり、素肌に羽織っただけのTシャツが汗で湿ってくる。 無数のアキアカネが飛び交い、時折、体に当たる。 指を広げて左手を伸ばしてみると、その指の先すべてに、紅色に染まったアキアカネが、椅子取りゲームのように先を争って羽を休めに来る。 目を細めて見てみると、赤唐辛子が指先に実っているように見える。 なんとかして写真を撮ってみようと試みるが、焦点距離の長い望遠レンズをつけていたため撮影できない。 この次は、マクロレンズをつけて外に出てみよう。 そこそこの秋風は、綿毛を飛ばすほどの力もなく、間もなく訪れるであろう別れを惜しむ時を、野アザミの種たちに与えてくれた。 線路脇の、ほんの僅かな小さな土手には、足の踏み場もないほどにニラの花が咲き乱れていた。 遠い昔、ほんの一粒の種が、何かのはずみでココに運ばれ、誰かに摘まれることもなく、長い月日の中で家族を作り、大集落となったのだろう。 あと少ししたら、種を分けてもらいに、再び訪ねてみよう。 滅びの美学の向こう側には、幼き日の楽しげな記憶が漂っている。 朽ちた石の階段は、その中央が擦り減って窪んでおり、端へ行くほどに苔に覆われていた。 上り切ったその奥には、よく陽の当たるちょっとした広場があり、陽炎が立って空気が歪んでいた。 その、歪んだ空気の奥では、小学生になったばかりの自分と同級生たちが、「赤影」や「月光仮面」、「マグマ大使」や「黄金バット」になりきって、土埃にまみれながら走り回っていた。 秋の陽炎は、記憶の底に埋もれていた淡い恋心すら、ダビングし過ぎて劣化したビデオのように再生し始める。 深い緑の藪となった、かつての庭のその奥に、一際目立つ女の子たちの姿があった。 集まって「ゴム飛び」をしているかのようなオイランソウと、残り僅かな秋の陽射しを眩しそうに見上げるコスモスは、すっかり野生化し、やんちゃな男の子の中でそれぞれに、桃色に染まって目を引いていた。 春に見つけておいた栗の木には、予想以上に多くのイガが実り、早くも幾つかが落ちていた。 足で踏みつけて割ってみるが、中はほとんど空っぽで、未成熟のものだけが落ちているのだとわかった。 とはいえ、管理者がおらず、肥料も与えられなくなって久しい栗の木は、その根元から深い藪に覆われており、まだ木にぶら下がったままの他のイガにも実は入っていないものと思われる。 秋の日の遠い記憶は釣瓶落とし・・・

    2018年09月03日21時14分

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