yoshi.s
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J
B
佳人あり ⑵ 2年生になっても同じクラスだった。うれしかった。うれしく思っている自分に気づいて、こんどは胸がドキドキした。 君はなんだか背が高くなった。 夏のプールの授業のとき、君の水着姿を見た。 1年生の時にも見たはずなのに、君はまったく違って見えた。眩しくて見ていられなかった。 君がぼくの横を通り過ぎたとき、君は「おいっ」と水泳帽でぼくの肩を叩いたが、ぼくは何も言うことができなかった。 だって、何て言ったらいいんだ? *下につづく
窓際の席 私はT君をずっと前から知ってたのよ。 幼稚園のころから。 でも家が遠かったから、放課後でも一緒に遊んだことはない。 クラスが一緒の時は、教室で会うだけだった。 彼は勉強もできるし、野球も上手だったけど、 いつも男の子たちと一緒だった。 だから安心してたのよね。 それがある日、彼の家の隣にKさんが越してきてから、 ちょっとあやしくなったの。 別に見た目には変わりは無いけど、彼の心の動きが 私にはわかるの。 Kさんは屈託なく彼に話しかけたり、笑いあったりしているけれど、 それがどんなに貴重なことか、彼女は知らないのだわ。 私は未だに彼に気軽に話しかけられない。 なにか用事が無い限り。 例えば週番のこととか掃除当番のこととか。 私は窓際の席が好き。 放課後、クラブ活動している彼をじっと見守るの。 校庭のこぶしがもう終わろうとしていた。
2018年04月25日05時51分
旅鈴さん おい、なんだよ。それならそういう態度をしてくれたらよかったのに。 ぼくが当番のことで何回か話しかけたとき、お前、いつもつっけんどんな返事しかしてくれなかったじゃないか。ぼくはちょっとがっかりしていたんだぞ。 そんなときだよ、K が隣りに越して来たのは。 K はちょっと男っぽくって、お茶目で、話しやすいんだ。 だから K とはよく話すけど、でも本当はお前のことがずっと気になっていたんだ。 そうだ、こんど一緒にショッピングモールに行かないか? ・・って T は言いたいはずですが、窓際の君の気持ちをまだ知らないのです。 でも校庭のこぶしの花は、どうやら知っているようです。ひらり、ひらり。
2018年04月25日10時12分
旅鈴さん だから安心していた・・ どんなに貴重なことか、彼女は知らない・・ 技が効いていますね。行間にふくらみが出ています。 それに旅鈴さんはいつも書き出しがいいですねえ。 すぱっと入る語り口。 読者の立場になれば、読み続けるかどうかは、やはり書き出しによりますね。 旅鈴さんから溢れ出てくる物語にいつも圧倒されていますよ。
2018年04月25日10時51分
yoshi.s様、 早速読んでくださってありがとうございます。 おほめにあずかり光栄です。 冒頭はいつもぱっと浮かびます。 後を続けるのが大変ですが。いつも行き当たりばったり。 閃いたらすぐPCに向かい、書いたり消したり。 先ず紙に書いてた時もあるのですが、PCの方がやりやすいです。 ふふふ、青い火はちろちろ燃えていますよ、幽霊火みたいに。
2018年04月25日14時38分
yoshi.s
*つづき 3年生になって受験体制に入った。 図書館に行くと、先にいた君と目が合った。 「ちょうど良かった。ここのところ知ってる?」って君が聞いた。「ああ、そこは先生によく聞いて、知ってるよ」と言って横に座ると、君の友だちがばらばらと寄って来て、小さな講習会になっちゃった。うれしいような、残念なような。でも君と隣り合って座っていたとき、君の匂いがした。ほんの一瞬だけだけれども、ぼくは夢の中にいた。 窓の外の桜が満開になるのを待っていたかのように、こぶしの花が散り始めていた。 *佳人あり3につづく
2018年04月24日11時02分