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写真掌編:夜会の花3(龍馬異聞)

写真掌編:夜会の花3(龍馬異聞)

J

    B

    とくに龍馬に対してである。 あの男、変わった男だ。 これまで自分が禁を破ってイギリス留学の手伝いをして来た薩摩や長州の若者たちは、みな藩から派遣された優秀な若者たちだ。帰国すれば国元に帰り、藩の一員として相応の仕事をするだろう。西郷や桂の尊王思想に基づき、天皇を中心とした国家作りに貢献するはずだ。 しかし龍馬は違う。龍馬は脱藩浪人だ。藩の支援も庇護もない。それなのに、幕藩体制をひっくり返そうという志を抱いた危険人物である。 しかし彼は他の志士たちのような尊王思想ではない。 *下につづく

    コメント7件

    yoshi.s

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    *つづき 彼は、自分自身まだはっきりと自覚はしていないが、人々はみな平等で、誰からも支配されず、市民自らが国を運営するという、アメリカが始めたばかりの民主主義国家を目指しているのだ。 アメリカから帰ったばかりの勝海舟から教えを受けたとはいえ、誰からの指図でもない。一介の浪人者が世界で始ったばかりの国家づくりと同じことをやろうとしている。西郷や桂といった、時の重要人物を動かしてである。しかもそれを面白がってやっている。まったくの自由人だ。自分の命が掛かっているというのに。 何という面白い男だ。 日本に来て6年になるが、あれだけの自由人は今のヨーロッパにも多くはいないはずだ。自分に似ているが、自分の根本は商売にある。しかし彼の根本はこの国を自由の国に変えることだ。そのためなら自分の命はどうでもよいと思っている。私心はみじんも感じられない。そんな人間がこの世にいるのだろうか。誰だって自分のために生きているはずなのに。 グラバーは、憧れにも似た気持ちで龍馬を見ていた。だからこそ採算を度外視して、いや実際には私費を投入してまで龍馬を上海に送ったのだ。 龍馬が上海を見、最新の世界情勢を聞き、いま地球上で人間がどういう方向に向かっているのかを理解すれば、彼の考えに輪郭が生まれ、俄然スケールアップするに違いない。帰って来た時には自分をはるかに超える国際人になっているだろう。そして自分は、これから彼が作る新しい国の恩恵を受けることになるだろう。 彼が帰って来た時には、また小曽根の家で夜会を開き、苦労をねぎらってやろう。そう、常に歴史の夜の舞台で働き、夜が開けたら新しい日本という花を咲かせようとしている龍馬のために。 その時にはまた、あの夜会の花、お龍に月琴を弾いてもらおう。 そんなことを考えて何だかうれしくなっている自分に気づき、グラバーは両手でごしごしと顔を擦った。 *この物語は創作です。歴史に沿ってはいますが、史実に基づいているわけではありません。

    2022年07月11日12時04分

    ninjin

    ninjin

    yoshi.sさんは龍馬がお好きなんですね、そして彼に広い世界をみせてあげたかったとお思いなのですね。 その理由は、yoshi.sさんが龍馬と同じく何より自由を愛していらっしゃるから・・・ 小生もはるかにスケールは小さいですが、金や地位よりも自由が一番大切だと考えています。 幕末の志士たちのうち、超一流の人間は維新の前に死に、一流の人間は西南戦争までに死に、二流以下の人間が貴顕高官となって明治国家を担ったといわれますね。 人間の価値に序列を付けるのは好きではありませんが前記一流以上の人々の 子孫は普通の市井の人々として暮らしておられますが、貴顕高官となって 藩閥政治を行った人々の子孫はその後爵位を貰い貴族院議員や財閥の一族 として日本の上流社会を作ったのは間違いのない事実でしょう。 地位や名誉から自由だった龍馬は、幕府が倒れた後は世界を巡る人生を構想していたのでしょうね。 yoshi.sさんの視点から生まれた時代小説楽しませていただきました。 しかし、このサイトで直接写真とは関係のない話題で盛り上がっているのはここだけでしょうね。

    2017年06月26日18時22分

    yoshi.s

    yoshi.s

    ninjinさん 地位や名誉から自由だった龍馬は・・と言うおっしゃり様に深く頷きます。 逆に言えば、地位や名誉への欲望は、心の自由を奪うものとの意ですね。おっしゃる通りです。 西郷も、「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困るものなり。この始末に困る人ならでは、艱難をともにして国家の大業は成し得られぬなり」と言っています。つまり私欲がない人ということです。そう言う西郷でさえも、龍馬に、些細なことにこだわっている、と叱られているのです。西郷の偉いところは、龍馬にそう叱られて、薩長同盟の申し出を即座に決断したことです。人間は行くところまで行くと、結局は、いかに私心がないか、ということが人物を見定める基準になるようですね。この時西郷は、そのことを龍馬に教えられたのだと思います。

    2017年06月27日01時37分

    旅鈴

    旅鈴

    今の時代に、龍馬のような人物は居るのでしょうか。 私心のない人間、出世や、名誉に欲のない人、世界情勢や、国の情勢を見極め、 その為に自分を役立たせようとする、大きな視野の持ち主。どこかに居るのでしょうか。

    2017年06月27日03時52分

    yoshi.s

    yoshi.s

    旅鈴さん 少なくとも政治家と教育者たる者は、すべてそうあって欲しいですね。

    2017年06月27日12時05分

    michy

    michy

    なにやら難しい問題になってきました。 私利私欲のない政治家や教育者がいてくれたら日本を任せたいですね。 いまや反対の人ばかりが目に付き憂うことばかりです。

    2017年06月27日17時34分

    yoshi.s

    yoshi.s

    michyさん 龍馬も武市も西郷も松蔭も高杉も、みな決して身分の高い武士ではなく、さほど豊かではありませんでした。そのような人たちほど私利私欲がなく、自分のことより世の中のために、という気概に溢れていました。武士の教育が質素倹約を旨とするものであり、ストイックな精神を養成したのだろうと思われます。 知識や弁舌だけでなく、私心の無さによって政治家や教育者を計ってもよいのではないでしょうか。

    2017年06月27日23時04分

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