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写真掌編:夜会の花1(龍馬異聞)

写真掌編:夜会の花1(龍馬異聞)

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    長崎の小曽根家では夜会が開かれていた。 満月の晩で、集まった人々は皆庭に出て月明かりを楽しんでいた。 多くは武士だったが、中には著名な文人や商人も混じっていた。 長崎の名だたる芸妓衆が集められ、この宵の夜会の華やかさは近年になかった。 その中でも水際立っていたのがお龍だった。 お龍は月琴を弾き、皆はそれに合わせてゆらゆらと踊った。 誰もほとんど口にしたことのない、葡萄酒が振る舞われた。 人々はグラバーがそうしたようにガラス杯の脚を持って目の高さに挙げ、目で乾杯をして赤い酒を口に運んだ。*下に

    コメント10件

    yoshi.s

    yoshi.s

    *つづき グラバーはイギリスの貿易商人で、曽我家の当主、曽我雲堂とは個人的にも商売上でも親しい付き合いをしていた。 この夜、グラバーは大事な仕事を抱えていた。 一人の男を密出国させることであった。 この夜会も彼の計画したことで、友人の曽我に主催を依頼したのだった。 この珍しいヨーロッパ風の夜会に人々の目を向けさせておいて、一方で密出国の支援を企てていたのだ。 夜会は街中の評判になっていて、曽我家に招かれていない人たちまで塀の外に押しかけていた。 その騒ぎをよそに長崎の港からグラバーの会社の船がひっそりと出航して行った。 行き先は中国の上海。乗っていたのは坂本龍馬。 グラバーの親会社に直接乗り込んで、銃の大量買い付けを行うためだ。 買った銃を薩摩の西郷に売る。薩長同盟の布石となる一大事業である。 この晩の華やかな夜会は、やがて日本を転回させるために打たれた重要な捨て石であった。 お良の月琴は、西洋の雰囲気を持ったこの夜会に集う人々に、新しい時代の到来を予感させるかのように美しく響いた。 *この掌編は創作です。

    2022年07月11日12時06分

    michy

    michy

    夜会の花に相応しく暗い背景の中に艶やかに咲く百合の花に見とれていましたら 密輸とか坂本竜馬の登場に引き込まれ、その場の情景が目に浮かぶようでした。 すべての事に精通しているyoshi.sさまの物語をまた楽しませて頂きました。 月琴を知らなくて調べました。お月様のようにまん丸い形でした。 お良さんを思い浮かべて月琴の音色を聞いてみたいです。 坂本竜馬の事がたくさんでてきました。 「月琴で綴る竜馬の手紙」展など、、 またひとつ新しいことを教えて頂きました。

    2017年06月18日08時47分

    yoshi.s

    yoshi.s

    michyさん 早速お出での上、コメントを下さりありがとうございます。 掌編を楽しみにして下さる方々のことを頭に思い浮かべながら、いままでとは少し変わった題材に取り組んでみました。 michyさんのコメントにいつも励まされます。やはり人は、誰かが喜んでくれると励みになるものですね。 私はすべてのことに精通しているのではなくて、あれこれと想像したり推理することが好きなだけです。この物語も歴史に沿ってはいますが史実に基づきません。また、坂本龍馬と西郷以外の登場人物名はすべて仮名です。

    2017年06月18日12時34分

    ninjin

    ninjin

    本格的時代劇が始まりましたね。 当時世界に向けて開かれていた唯一の窓 二百数十年の間オランダ語や中国語の音を 聞き続けた長崎の街はバイリンガル文化を 育んでいますね。 面白いのは幕末外国商人と交易して倒幕 運動を起こしたのが長崎の人間ではなく 萩や土佐、鹿児島など田舎の人間だったこと 鄙が持つエネルギーと国際都市の情報が 出逢ったところに時代を動かす力が生まれた のですね。 次回が楽しみです。 ところでこの百合は華やかな夜会の象徴 なのですね。

    2017年06月18日15時33分

    旅鈴

    旅鈴

    前回覗いたときは、創作はありませんでした。で、今日また覗いて見ると、なんとなんと。 素晴らしいお話です。いかにもありそうです。 月琴は横溝正史の月琴島の殺人だったかで、初めて名前を知りました。 竜馬、大好きです。桂浜でしたか、竜馬の像も見ましたよ。いろいろな俳優さんが竜馬を演じておられますが、内野聖陽さんとか、江口洋介さんが印象に残っています。 夜会の百合の花、濃厚な匂いで怪しげな雰囲気をかもしだしています。

    2017年06月18日23時13分

    annshii46

    annshii46

    幕末の薩長土肥、東日本は眠っていたかのような印象のあの時代ですね。夜会の花のお写真からまたタイムスリップしてしまいました・・・ たかだか150年ぐらい前にあんなに志を持った日本人、先輩が沢山いたなんてとつくづく思います。 あの当時のお良みたいな女性にもあってみたいな!

    2017年06月18日23時40分

    yoshi.s

    yoshi.s

    ninjinさん 今回こっきりの掌編のつもりでした。 でもninjinさんのコメントに、本格的時代劇が始りましたね、とあります。次回が楽しみです、ともあります。 それではご期待に応えなければとの思いで、構想を練り始めましたが、どうなりますやら。

    2017年06月21日20時42分

    yoshi.s

    yoshi.s

    旅鈴さん 1回だけの掌編でしたが、上記のように、もう少し突っ込んでみようかと考えています。 あの変革の時代に登場したエキセントリックな人物の龍馬については多くの作家が書いています。 テレビでは、最近ではNHKの龍馬伝。福山雅治が好演しました。 龍馬はもういいでしょう。視点を変えて想像を巡らせてみたいと思っています。

    2017年06月21日21時54分

    yoshi.s

    yoshi.s

    annshii46さん お龍さんか。 ここではお良としましたが、お龍も絵になる人物ですね。うん、うん。

    2017年06月21日21時56分

    yoshi.s

    yoshi.s

    続編を書きました。龍馬異聞という副題を付けましたので、以降は仮名を取り止め、史実通りの名にしました。お良も、お龍と改めました。 曽我家の史実名は小曽根家、グローバーはグラバーですが、この第1編では訂正していません。

    2017年06月30日00時33分

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