yoshi.s ファン登録
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その女(ひと)は夕暮れの岸辺の道に立っていた。 花にはまだ少し早い桜並木の道は、遠くがはっきりとは見えなくなってきた。 だれかを待っているようでもない。 わずかにうつむいて河の流れを見ているようにも見える。 白いワンピースの裾がわずかな風になびいていた。 つばの広い帽子の下に長い黒髪。肩から顔に掛かるようにかすかに揺れていた。 薄い闇が迫ってきて、その女(ひと)の白い姿はまるで宙に浮いているように見えてきた。 僕はだんだん心配になってきた。 もしかしたら、妙なことを考えているのではないだろうか。
何という想像力でしょう。 私は以前にも述べましたが、Yoshi.s様は純文学の域に入っておられます。多感な青春時代、夕闇の見せる不思議な光景、このたった一輪のこぶしの花から生まれた物語。 感じ入りました。
2017年04月05日03時17分
ロマンチストですね。 僕を呼ぶ声で起承転結の転が起こり 読む者の意識をぐっと掴む 上手いですね。 女性への淡い憧れをもっていた少年期の 甘酸っぱい記憶が蘇りました。
2017年04月05日08時21分
michyさん いつもいつもお読み下さりありがとうございます。 michyさんは何と言ってくれるかな、と思うとますますやる気が湧いてきます。 まだまだやりますよ。
2017年04月05日17時28分
yoshi.s
*つづき 声をかけてみようか。 いや、声を掛けるにはちょっと素敵過ぎて憚られる。いや、でも・・。 そのとき僕を呼ぶ声がした。 「おーい、なにしてるんだ?」 振り返ると、同級生が自転車で通り過ぎようとしている。 「いや、何にも・・」「またな・・」 そしてまたその女(ひと)の方を見ると、もうそこには誰もいなかった。 えっ、そ、そんな。 辺りを見渡しても誰もいない。 そんなはずはない、今まで・・。 あわててその女(ひと)のいたところに駆け寄った。思わず川を見たが、水辺までは50mはあろうか。一瞬で行ける距離ではない。 その女(ひと)の立っていた辺りを見ると、一輪の真っ白いこぶしの花が落ちていた。 どこから飛んで来たのだろう。 そして、あの女(ひと)は・・。 夕闇がその白い花さえも包み隠し始めていた。
2017年04月05日00時38分