写真共有サイトPHOTOHITO人と写真をつなぐ場所

yoshi.s yoshi.s ファン登録

写真掌編:春のまぼろし

写真掌編:春のまぼろし

J

    B

    その女(ひと)は夕暮れの岸辺の道に立っていた。 花にはまだ少し早い桜並木の道は、遠くがはっきりとは見えなくなってきた。 だれかを待っているようでもない。 わずかにうつむいて河の流れを見ているようにも見える。 白いワンピースの裾がわずかな風になびいていた。 つばの広い帽子の下に長い黒髪。肩から顔に掛かるようにかすかに揺れていた。 薄い闇が迫ってきて、その女(ひと)の白い姿はまるで宙に浮いているように見えてきた。 僕はだんだん心配になってきた。 もしかしたら、妙なことを考えているのではないだろうか。

    コメント7件

    yoshi.s

    yoshi.s

    *つづき 声をかけてみようか。 いや、声を掛けるにはちょっと素敵過ぎて憚られる。いや、でも・・。 そのとき僕を呼ぶ声がした。 「おーい、なにしてるんだ?」 振り返ると、同級生が自転車で通り過ぎようとしている。 「いや、何にも・・」「またな・・」 そしてまたその女(ひと)の方を見ると、もうそこには誰もいなかった。 えっ、そ、そんな。 辺りを見渡しても誰もいない。 そんなはずはない、今まで・・。 あわててその女(ひと)のいたところに駆け寄った。思わず川を見たが、水辺までは50mはあろうか。一瞬で行ける距離ではない。 その女(ひと)の立っていた辺りを見ると、一輪の真っ白いこぶしの花が落ちていた。 どこから飛んで来たのだろう。 そして、あの女(ひと)は・・。 夕闇がその白い花さえも包み隠し始めていた。

    2017年04月05日00時38分

    旅鈴

    旅鈴

    何という想像力でしょう。 私は以前にも述べましたが、Yoshi.s様は純文学の域に入っておられます。多感な青春時代、夕闇の見せる不思議な光景、このたった一輪のこぶしの花から生まれた物語。 感じ入りました。

    2017年04月05日03時17分

    ninjin

    ninjin

    ロマンチストですね。 僕を呼ぶ声で起承転結の転が起こり 読む者の意識をぐっと掴む 上手いですね。 女性への淡い憧れをもっていた少年期の 甘酸っぱい記憶が蘇りました。

    2017年04月05日08時21分

    michy

    michy

    その女(ひと)はこぶしの精です~ 夕闇の中の美しい一輪のこぶしから生まれた 心に沁み入る物語ありがとうございました。

    2017年04月05日07時33分

    yoshi.s

    yoshi.s

    旅鈴さん ありがとうございます。 ますます意欲が湧いてきました。 人は褒められて成長するものです。

    2017年04月05日17時23分

    yoshi.s

    yoshi.s

    michyさん いつもいつもお読み下さりありがとうございます。 michyさんは何と言ってくれるかな、と思うとますますやる気が湧いてきます。 まだまだやりますよ。

    2017年04月05日17時28分

    yoshi.s

    yoshi.s

    ninjinさん もちろんです。 ロマンチックであることが男の証明と言うものです。 技術は、やっていれば多少でも良くなるものと信じています。

    2017年04月05日17時40分

    新規登録ログインしてコメントを書き込む

    同じタグが設定されたyoshi.sさんの作品

    • 写真句:藤垂る
    • 写真指編:最後の輝き
    • 写真エッセイ:メタセコイア の日没
    • 写真エッセイ:東京散歩31:東京都庁5:夕焼け東京
    • 写真エッセイ:苺
    • 写真句:桜6:花ひかる

    最近お気に入り登録したユーザー

    写真を削除しようとしています。

    本当に写真を削除しますか?

    こちらのレビューを他のユーザーに公開します。

    レビューを公開しますか?
    講評の公開設定については必ずこちらをお読みください。

    コメントを削除しようとしています。

    選択したコメントを削除しますか?

    エラーが発生しました

    エラー内容

    PAGE TOP