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*つづき 桜の頃になって、お龍のいる小曽根邸では、また夜会が開かれようとしていた。 長州での戦さが終わりしばらくして、龍馬や亀山社中のメンバーが長崎に帰ってきたので、グラバーと小曽根が語らって、労をねぎらってやろうと考えたのだ。 夜会は、例によってワインで始まり、庭に設えた低い櫓舞台に三味線や踊りの余興が出て、また華やかな会となった。 *下につづく
グラバーは1859年に日本にきて、1867年が明治元年であることまた五代友厚が通訳なしに日本語でグラバーと話したということだから、短期間に日本語を身に着けたのでしょうね。 彼の日本語があればこそ、明治維新が成立しいたのかもしれませんね。
2022年07月29日01時30分
頑張れ!てんちゃんさん よくご存知だ。 井上聞多(馨)や伊藤俊輔(博文)等、長州ファイブと呼ばれる5人をロンドン大学に送る手引きをしたのはグラバーだし、薩摩からの派遣団を手引きしてもいます。いずれも各藩からの派遣とは言え、鎖国中だから密航ということになりますね。 帰国した彼らとの交流は、日本を動かしました。 グラバーの人生も、小説そのものです。 この、夜会の花としたタイトルの主人公はグラバーでもあります。 読んでくれてありがとう。
2022年07月29日10時53分
yoshi.s
*上からのつづき グラバーと小曽根は龍馬の両隣に座って、酒を勧めた。 「坂本さま、ささ、どうぞ」。「ほんまにお疲れさまでしたなあ」 「いやなに、小曽根さぁ、好きでやっちょるこつじゃけぇ、うれしい疲れぜよ」 グラバーも、日本の習慣にならって酒を注ぎながら言った。 「龍馬サン、日本が動き出シマシタネ」 「ああ、ほげんじゃのう」。「んでも、まだまだこれからぜよ」。「やがては公論によって動く国にせんといかんけんのう」 「そうデスネ。国の方針はパーラメント(議会)で決メルと国がヒトツニナリマスネ」 「おお、そうじゃが、そんじゃあ、天皇はどうするかね?」 「国王は、チェアマン、パーラメントをマトメル人にナルカ、ソレトモ、パーラメントで決まったコトに、イエス、ノーを言う人になればイイトオモイマス」 「ああ、それやったらそれは、今の幕府や朝廷とおんなじぜよ」 「ハイ。でも、パーラメントは、国王が選んだ人デハナク、国民ゼンブで選ぶノデス。デスカラ、パーラメントの決議に、カンタンにノーを出すと問題ニナリマス」 「ダカラ国王は、慎重にナルし、人々の意見の集約であるパーラメントの決議を尊重スルヨウニナリマス」 「ああ、王が民の意見をよく聞くようになる、というこっちゃな」 「ハイ。ソノトオリデス」 「それはええのう。それが議会政治っちゅうもんか」 「ハイ。ソノトオリデス」 「それはええのう」。「さあ、グラバーさぁも、も一杯いかんね!」 そんな話に龍馬たちが盛り上がっているところに、月琴を持ったお龍が舞台に登場した。 お龍の歌と月琴と、そしてその美貌を知っている多くの客から拍手が起こった。 お龍の歌と月琴の音(ね)は、長崎の宵空に響き渡った。 小曽根が言った。「お龍さんは、まことに夜会の花ですなあ」 するとグラバーが言った。「そうデスネ」。「ソシテ龍馬さんも夜会の花デス」。「いつも表舞台デハナク、夜の見えないトコロで、活躍シテイル。ソレデ世の中が大きく変わりつつアリマス」。「龍馬さんは、夜会の花、デス」 すると龍馬が言った。「そいを言うなら、夜会の花はいっぱいおるぜよ」。「武市さぁも、以蔵も、長次郎も(近藤。ユニオン号を長州に斡旋した亀山社中の草分け)、みんなもうおらんようなったが、みーんな夜会の花ぜよ」。「他にも、名は知られんでも夜の舞台に、いや片隅にでも咲いた花はようけおるぜよ」 「小曽根さぁ、,グラバーさぁ、あんたらもそうじゃ」。「陰で働くもんがおらにゃあ、なーんも動かんのじゃ」 そこに演奏を終えたお龍がやってきた。 「おお、夜会の花がやって来たぜよ」と龍馬が言った。 お龍が「何のことですやろ」と言うと、みんなが大きく笑った。 小曽根邸での夜会は、夜遅くまで続いた。 *つづく
2022年07月31日22時26分