写真共有サイトPHOTOHITO人と写真をつなぐ場所

yoshi.s yoshi.s ファン登録

写真掌編:続・夜会の花(龍馬異聞 Ⅱ)3

写真掌編:続・夜会の花(龍馬異聞 Ⅱ)3

J

    B

    *つづき  宴は時を追って盛んになって行った。 龍馬は途中でそっと抜け出し、お龍の部屋に行った。 「お龍、どげんした?宴会のどこにも居らんので、きっとここじゃと思ったぜよ」。 「済まんかったのお。なかなか二人きりで会えんかった」  お龍は居住まいを正して言った。「ようお帰りやす」 「おお、またおまんの顔を見れて嬉しいぜよ」。「お龍、これは土産じゃ」と言って龍馬は、懐から小さな包みを出した。 *下につづく

    コメント6件

    yoshi.s

    yoshi.s

    *上からのつづき 「まあ、うれし。なんやろ?」 お龍が包みを開けると、細長い箱が入っていた。少しいじると、横に開いた。中には銀の鎖に繋がれた宝石が入っていた」 「きれいやわあ」 「その石を開けてみい」。露馬が言った。 「これ開(あ)くん?」と言いながら、お龍が宝石を、これもまた少しいじると、ぱかんと横に開いた。中に、龍馬の顔があった。 「龍馬はん、こないえろう小そうなって・・」などと、お龍は可愛らしいことを言った。 「はっはっは。いつもわしはおらん きにの。代わりにおまんの胸元にその小さなわしが居座ることにするぜよ」 「ぺんだんと、と言うち。西洋人のおなごは、そいつを首に掛けとると言うちょる。おまんもそれを首に掛けち。したらわしは、いつもおまんのええところに居るきにの」 お龍は、「龍馬はんが居らはらへん時には、いつもここに置いときます」と両手で胸を押さえた。  そこに障子の外から声が掛かった。 「もうし!お龍はん、皆が、お龍はんの月琴をいま一度聴きたいと言うてます」 お龍と龍馬は顔を見合わせた。 龍馬が笑いながら言った。「行っち来(き)い。わしも聴きに行くけん」 お龍は、「ほな、一節(ひとふし)弾いて来ます」と言って、月琴を抱えた。 夜会の花が再び表に出た。 宴会の賑わいは一層強くなっていた。 長崎の夏の夜はようやく更け始まったばかりだ。

    2022年07月18日18時35分

    頑張れ!てんちゃん

    頑張れ!てんちゃん

    土佐弁と京言葉の対話、丁寧に書き分けていますね。 こういった対話は面白いと思うとともに、多分そのころの地方交流の少なさから半分外国語に近かったろうから、話すことができたのは、かなり交流に慣れていた狭い世界の人達なんだろうなと思います。 言葉に加えて所作なども地方で大きく違ったろうから、お龍さんも大変だったことでしょう。

    2022年07月11日00時13分

    yoshi.s

    yoshi.s

    頑張れ!てんちゃんさん 目の付け所が面白いですねえ。 おっしゃる通り、言葉については少々調べる必要がありました。これでも正確かどうかは分かりません。 まあ、この時代は京が表舞台ですから、ここで出会った田舎侍たちがどんな会話をしたかは、興味深いところですね。

    2022年07月11日01時10分

    ninjin

    ninjin

    力作を読ませていただいて嬉しいですね。 幕末の京都には、勤王の志士達が、長州、土佐、肥後、薩摩から・・・ 幕府側として会津、武州(新撰組)、彦根から・・・ 江戸育ちの殿さまたちは、江戸城の殿中では、互いに言葉が通じたよう ですが、竜馬のような脱藩浪人同士は、最初は通じなかったでしょう。 異郷の武士の間では謡の言葉で話し、通じ合ったと言いますね。 それでも通じなかったら筆談でしょう。漢文の素養が武士の最低限の 教養ですね。 江戸の無血開城の話し合いで江戸っ子海舟と薩摩っぽの西郷は、どんな 言葉で通じ合ったのでしょうかね。

    2022年07月13日07時04分

    yoshi.s

    yoshi.s

    ninjinさんも、言葉に興味がありますか。 異郷の者同士で話す時には、きっと多少でも自分の方言を抑えたのでしょうね。 京が志士たちの活動の場所だったのでしょうから、まあ関西弁風に喋ろうとしたのではないでしょうか。龍馬は江戸に居たので、その時にはちょっと江戸風に。 私が大学生になって東京に行った時には、そんな努力をしたことを覚えています。 語尾が難しかったですね。茨城弁のだっぺを、東京弁の、ろうに変えるのには時間がかかりました。だから龍馬の、ぜよは、変わらなかったんじゃないかな。

    2022年07月14日21時14分

    旅鈴

    旅鈴

    私ごとながらある体験を。 小学生のころ近所に他所から新しい家族が引っ越してきました。 私より一つ上の女の子と弟二人が居ました。 ある日私が「あそぼ!」と呼びに行くとお母さんが女の子に「弟たちも 連れていきなよ」と言いました。 女の子が弟二人を連れてきているので不思議で、 「どうして?連れて行ったらいかんの違うん?」 というと女の子は連れて行きなさいとお母さんは言ったのだと説明。 「行くな」もしくは「行きよ」(行きなさい)は知っていても 「行きな」なんて粋な(洒落?)言葉遣いを知らなかったのです。

    2022年08月01日23時49分

    新規登録ログインしてコメントを書き込む

    同じタグが設定されたyoshi.sさんの作品

    • 写真句:花の森のてふてふ2
    • 写真句:桜6:花ひかる
    • 写真句:梅の香5:希望
    • 写真句:藤垂る
    • 写真エッセイ:一期一会
    • 写真エッセイ:メタセコイア の日没

    最近お気に入り登録したユーザー

    写真を削除しようとしています。

    本当に写真を削除しますか?

    こちらのレビューを他のユーザーに公開します。

    レビューを公開しますか?
    講評の公開設定については必ずこちらをお読みください。

    コメントを削除しようとしています。

    選択したコメントを削除しますか?

    エラーが発生しました

    エラー内容

    PAGE TOP