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写真掌編:続・夜会の花(龍馬異聞 Ⅱ)2

写真掌編:続・夜会の花(龍馬異聞 Ⅱ)2

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    *つづき  月琴の曲を弾き終え、聴衆の拍手を浴びたお龍は、お辞儀をしながら龍馬のところに向かおうとした。しかし龍馬はすでに何人かの浪士たちに囲まれていた。みな龍馬の話を聞きたがっていたのだ。 お龍は龍馬が何をやっているのかはよく知らなかったが、この人はこういう人なのだと、心得ていた。  夜会の花はひっそりと自分の部屋に戻った。 *下につづく

    コメント3件

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    *つづき  逸早く龍馬のところ近づいたのは、同じ土佐の浪士、中岡慎太郎だった。 龍馬が上海に出発する少し前に、二人は薩摩の西郷吉之助と長州の桂小五郎を引き合わせる段取りをした。それまで犬猿の仲であった薩摩と長州を連合させ、長州にとって宿敵である会津を打たせようと算段したのである。  会津藩主松平容保は、幕府の命を受けて京都守護職の重責を担い、京都見廻組や新選組を配下として京の街の治安に当たっていた。数年前に長州はこの会津と薩摩の連合軍によって京から追い払われたのだった。  敵同士であった薩長両藩を同盟させようという中岡と龍馬のこの試みは、それぞれの思惑もあり、うまく行かなかった。  ただ会うという約束だけではだめだと心得た龍馬は、一計を案じた。実利を以って両者を引き合わせようと考えたのである。  このころ幕府は諸外国に対して、長州との取引を禁じていた。風雲急を告げるこの時代に、長州は必要な銃を買うことができなかったのである。長州は喉から手が出るほどに銃が欲しかった。  そこで龍馬は、薩摩名義で外国から銃を買い、それを長州に転売するという計画を立てた。その代わりに、米不足で悩んでいた薩摩に長州米を売るという取引を成立させた。これが龍馬の組織した亀山社中の初仕事であった。 亀山社中は、土佐の脱藩浪人を中心に、藩士以外の誰でもを集めて長崎に組織した、商社と民兵組織と学校を総合したようなものであった。龍馬にとっては自分の描いた夢を実現するための手段であった。亀山社中は、のちに土佐藩の外郭組織となり、海援隊と名を変えた。中岡慎太郎もこれに対応して陸援隊を組織した。  この薩長相互融通の計画は成功し、歴史に残る薩長同盟の端緒となった。  銃はグラバーから買ったことになってはいるが、7000丁もの銃がグラバーの手元にあるはずもなく、実際には上海にある親会社のジョーダン・マラソン商会から輸入したのである。龍馬がグラバーの手引きで上海に向かったのは、それが目的であった。  グラバーの親会社、ジョーダン・マラソンは、アメリカの南北戦争が終わって大量に余った銃の売り付け先が、向こうから飛び込んで来たので、大いに喜んだ。斡旋をしたグラバーに対しても相応の見返りをしたし、そんな話を懐にして上海にやってきた龍馬に対しては最上級の待遇をしたのだった。それはつまり、グラバーの要望通り、龍馬に対して世界情勢を講義することであった。  もちろんグラバーは、自分が直接親会社に注文することもできたのだが、龍馬に世界を覗かせる良い機会だと考え、龍馬を上海に送る段取りをしたのであった。グラバーは、まさに龍馬こそがこの日本を変えるキイパーソンだと思ったのだ。 日本がヨーロッパやアメリカのような民主主義の国になれば、自分のビジネスもうまく行く。それはまた、自分の国イギリスがアジアの端っこにまで覇権を広げる布石にもなるはずだ。グラバーもまた、遠くを見る男であった。  龍馬は2カ月足らずの上海滞在のうちに、世界で起こっていることを、ほぼリアルタイムで知ることになった。龍馬はこの2ヶ月間で一気に世界人になったと言っても過言ではない。  「で、うまく行ったのかい?」。中岡が聞いた。 「ああ、うまく行った。7300丁を買い付けた。持って帰ったぜよ」。「支払いはグラバーを通してだ」と龍馬が答えた。 重ねて龍馬は、「例の船に積んで来たぜよ」と、言った。 龍馬の言う例の船とは、長州が買った蒸気船ユニオン号のことだ。外国とは一切の取引ができなくなっていた長州にとって、蒸気船が手に入ることは、大きな力を得ることだった。これもまた薩摩名義で買ったもので、間には亀山社中が入っていた。  中岡は満面の笑みを浮かべて、「そうか。これで成るな、薩長盟約!」と言った。 「よくやった、龍馬。これから一緒に一杯やりたいところだが、今夜はゆっくり休んでくれ」。「お龍さんもいるしな」と、からかうように言って、去って行った。 *つづく

    2022年07月18日18時32分

    今田三六

    今田三六

    飛び入りでーす! ***** 文久3年の春である。宵の口まえの神戸三宮のとある居酒屋で、三つ年上の坂本龍馬と岡田以蔵が酒を酌み交わしている。客は他に居ない。龍馬の奢りであろう。ほろ酔い気分に任せ、酒を注ぎながらそっと尋ねる。 「ところで以蔵、どげえしち人ぅ斬るんか聞かせちくれちゃ」  「そりゃー簡単さ」   「人ぅ斬るんがか?」 「あー!剣術をやっちゅー奴ばあ簡単さ」   「どいて?」 「龍馬さん、うちと斬り合うことになったらどうする?」 「天誅にはかなわんから、逃げるかね」  「ははっ!それがええぜよ。剣術やっちゅーと、斬りにくる奴は前から来る思うちゅー。やけんどさ、なんで前から行かんとならんのよ」 「それなら後ろから行くのかい?」   「あー!後ろにそっと寄って、尻の下でも、膝でもまず斬る。あとは簡単さ。あー!寝込みを襲うたり、多人数でかかったりもする」  「卑怯と思わんの?」 「どいて?斬るがはうちの役やき、確実の方がええぜよ」  「ふーん!……」 「どいたが?黙りこくってさ」 「以蔵…勝先生の警護をしてくれんかい。われの話しを聞いちょったら刺客の手の内を知っちゅーき、適任思うたぜよ」 「龍馬さん、面白いこと言うね。うちへの頼みなら勝安房を斬れという話しやないのかね?」 「いーや、人を斬って天下の為になるのもええが、天下の為になる人を守る仕事はもっとええぜよ」 「ふーん!」 *好奇心旺盛の龍馬と、人斬り以外に誇れるものが無い以蔵との会話を想像しました。実際、以蔵は勝の警護をして刺客を切り伏せ、彼の命を救っています。 毒をもって毒を制す!龍馬は大したモノですね。

    2022年07月10日08時14分

    yoshi.s

    yoshi.s

    今田三六さん いやあ、面白い! まず、要旨が全て会話体。読みやすい。 どこで習うたか、土佐弁も堂にいっちょる。 内容には重要な要素が含まれています。  目的を達成するためには手段を選ばない以蔵。常識と言われるものに捉われないその発想に、目のうろこを落とされます。 それに対して、蛇の道は蛇。殺し屋をボディガードにするという龍馬の逆転の発想もまた、当時としては極めて実用的であり合理的です。 歴史の中で起こったことを踏まえて、そのエピソードを見事に創作しました。まるで本当にあったかのようなやり取りです。三六さん、どこでもドア〜で、見て来たんじゃないの? 龍馬の最後のセリフがいい! 先日の安部さんの件。まさしく刺客は後ろから狙った。以蔵がいたらなあ・・。 三六さん、素晴らしい掌編小説を引っさげての飛び入り、ありがとうございます。

    2022年07月11日11時55分

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