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二ヶ月が経った。 上海から戻ってきた龍馬は、まるで別人だった。 長崎を出航するときには、あんなにギラギラと目を輝かせていたのに、いま彼を出迎えるグラバーに握手の手を伸ばす龍馬の目は、どこか遠くを見ているようだった。 グラバーは、「ああ、この男はもう、私を超えて新しい世界に旅立ってしまったようだ」と思った。 「龍馬、よく帰ってきた。今日は君の帰国祝いだ。もちろんお龍さんも来るぞ」。「もっとも建前は、小曽根と私の新しい事業の提携祝いだがね」とウィンクした。グラバーの声は弾んでいた。 *下につづく
掌編小説、夜会の花(龍馬異聞)に興味のある写友に: これは続編です。 5年前にここにアップした夜会の花(龍馬異聞)を、先にお読みくださるようにお勧めします。 *夜会の花(龍馬異聞)1〜3: https://photohito.com/photo/6836276/
2022年07月06日23時27分
満を持しての続編ですね。 5年前のアップのユリの花の色はピンクや赤。ピンクのユリの花言葉は「虚栄心」 それに対して、こんどのユリは白色で、花言葉は「純潔」「威厳」など。 上海に行く前は、やっぱりかっこつけやはったりがあったのかもしれません。しかし向こうで世界を見て、かつ幕府転覆の具体的な手段が入手できてしまったことで、覚悟が決まり純化したのでしょう。
2022年07月10日23時52分
頑張れ!てんちゃんさん なるほど。百合の色の花言葉の違いまで考慮に入れたわけではありませんでした。 でもそのように理解してくださって嬉しいですねえ。
2022年07月11日01時03分
坂本龍馬。倒幕の重要人物の一人くらいの知識しかないので お恥ずかしいです。 お龍さん、とても魅力的な女性ですね。 月琴の音色、調べて聴きました。 上海にいる竜馬の事を思いながら爪弾いてはったのですね。 夜ごと流れる月琴の音色が お座敷の障子から 月の光に照らされてたお庭へと 静かに流れていく光景を想像しました。 無事に帰る竜馬を待ち続けながら、うちに秘めた 情熱や気丈さ。 そして宴のざわめきが向こうに聞こえる中、お龍さんの部屋で二人で交わす会話に 胸キュンになりました! 居住まいを正して「ようおかえりやす。」 「これ あくん?」「こないえろう小そうなって・・」 「ここに置いときます」と両手で胸を押さえる仕草。もうすべてがたまりません。 私が男性やったら、無防備にぞっこんになります。 前編もあるのですね。yoshi.sさん、こんな大作書かれてたのですね! 前編も楽しみに読ませて頂きます(*^^*)
2022年07月14日11時34分
いずっちさん よく読んでくれて嬉しいなあ。 お龍は、まさしくいずっちさんがおっしゃるような女性だったのです。 龍馬を、さらに盟友の西郷をして、「おもしろい女だ」と言わしめる女性だったのですから。 おもしろいとは無論、腹が据わっている、頭が切れる、という意味です。 龍馬でなくとも惚れますが、果たして手に負えるか。龍馬ならではだったのでしょう。 いずっちさん、帰って来るのを心待ちにしていますよ。
2022年07月15日16時22分
今日読ませていただきました。 まさしくその場にいるような臨場感。 登場人物の言葉使いがいかにも、らしいですよね。 夜会の花がお龍さんだけでなく裏方で働く人々をも指すということ、 感動しました。 これからが楽しみです。
2022年07月31日21時03分
旅鈴さん ああ、うれしいなあ。 核心を掴まえてくださった。さすがだ。 そう、あの頃の志士たちが、みな夜会の花なのです。幕末という夜会のね。 5年ぶりの続編です。興に乗って、最後まで行ってしまいます。
2022年07月31日21時26分
yoshi.s
*上からのつづき 小曽根乾堂(けんどう)の屋敷では、夕刻を待たずに再びの夜会が開かれ、また大いに賑わっていた。 集まった人々は前にも増して多く、みな葡萄酒のグラスを挙げて乾杯をした。武士も町人も皆一緒だった。 もちろんお龍は月琴を弾いた。 お龍は、龍馬が上海に旅立ったあとも小曽根家に投宿していた。 乾堂は、龍馬たちが家族であるかのように世話を焼いた。この若者に、時代を切り開く無限の可能性を感じていたのだ。 お龍は乾堂の娘きくから月琴を学んだ。もともと乾堂が月琴の名手であり、自分の娘たちに伝授していたものだった。 お龍の月琴は夕暮れの夏の庭に響き渡り、人々の胸を打った。 月琴を弾きながら、お龍は時おり龍馬の方を見た。お龍の目は潤んでいた。いつどこで死んでもおかしくない龍馬がよく無事で帰って来てくれた、という思いがあったのだ。 龍馬は、お龍と初めて会った時のことを思い返していた。 いい女で、頭の良さも感じさせた。お龍は典医の娘で教育もあったが、父が死ぬと家運が衰え、龍馬に会った時には七条遊郭の旅館で女中をしていた。 名を聞くと、紙に龍と書いた。龍馬は笑いながら、自分と同じだ、と言った。するとお龍は、「龍が二匹もいたのでは喧嘩にならしまへんかなあ」と言った。そこで龍馬が「いや二匹の龍は双龍と言って、仲良く絡み合うのだ」と言って両腕を絡ませて見せると、お龍は赤くなって下を向いてしまった。 その分かり易さに、龍馬はお龍に一気に惚れてしまったのだ。 *次回につづく
2022年07月16日23時47分