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「え、おれのこと?」 「そうだ。他にだれがいる?’」 「だっておれ、もう兄ちゃんじゃないし・・。おじさんですらない。残念だが・・」 「この水仙からすれば、人間なぞみんな兄ちゃんだ。なにせおれは仙人だからな」 「ああ、そう言えばそうだ、水仙だものなあ。でもそんなに若々しいのに・・」 「だから言っただろう?見てくれだの何年生きたのだのということは、いのちの世界では意味がないのだ。 「ほう。だとすれば、何に意味があるんだ?」 *下につづく
はなてふさんは、個を離れられないか。無理もない。人間の99.99・・%が離れられないのだから。 でも他の生き物は初めから離れている。だからいのちは個を超えて続いている。 果たして人間は・・?
2022年04月13日19時39分
yoshi.s
*上からの続き 「いのちが続くことだ。個を超えてな」 「そりゃあそうだが、人間としては、自分がどう生きるか、が大きな問題なんだ」 「はは。そんな風に一個一個の都合を考えるから、あーでもない、こーでもないと悩むのだ」 「そんなこと言ったって、人間はみな一人一人が基本だ。それが集まって協力し合う。そこに喜びも楽しみも生まれる」 「だから他を妬んだり、自分で悩んだりするのだ。おまけに、お互いに殺し合いまでする。そんなことをするから、いのちが途絶えてしまうのだ」。「大きないのちの流れの中では自も他もない。水を見てみろ。空気を見てみろ。いや、空気は見えないか・・。草や木を見てみろ。動物たちを見てみろ。おれがだのお前がだのとやっているか?’」 「動物はやっている。ケンカだってする。草木だって他を荒らして自分が生きるということをしている」 「それは大きないのちのための働きに過ぎない。全体の働きのためだ。一人一人という個を離れれば、それが分かる」。「お前たちの先生もそう言っていたではないか。個を離れよ。諸法無我、と」 「え、お釈迦様のあれは、そういうことだったのか」 「そうだ。大きないのちには分け隔てはないのだ」 「だからいのちは、ただ続くことに意味がある、というのか」 「さっきからそう言っているだろう、兄ちゃん」 「兄ちゃん、・・って。まあそう呼ばれて悪い気はしないが・・」 「そうか。それなら兄ちゃんとでも、赤ちゃんとでも呼んでやろう」 「いや、さすがに赤ちゃんはなあ・・」 「はっはっは」 「ははは」。「ところで、何の用事?」 「うん。実はな・・・」 こうして、水仙と私の会話は果てしなく続いていった。 え、何を話したのか、ですって? あなたも、自分という区別を離れて大きないのちの流れの中に融け込んで行けば聞こえますよ。水仙の声が。話しもできる。ほうら、表情まで見えてきたでしょ? *おしまい
2022年04月15日12時38分